前回までのアイテム紹介で、とりあえず1パターンのコーデが完成した。ボタンダウンシャツにチノパン、ブレザーをはおってローファーを履く。ベルトのチョイスは、ローファーの色に合わせた革ベルト、素材はコードヴァンだと最高だ。ソックスは定番のクルーソックスをチョイスすれば、王道のIVY基本コーデの完成である。
このコーデを完成させるために、まだ説明していない2つのアイテムについて、説明しておきたい。
コードヴァンの革ベルト
コードヴァンとは、馬のお尻部分からとれる革である。そもそも一頭の馬からとれる革の量自体も少なく、IVYの黎明期には、「1頭の馬からくつ2足分しかとれない」という広告が、その希少性をアピールしていた。特徴は、とにかく丈夫なことと光沢の良さである。
IVYの「ねばならぬ」として導入されたドレスコードには、このような小物に対する合わせ方も多数含まれていた。革製のアクセサリーを身につけるときは、その色を統一する、というものである。
ベルトからはじまり、財布、小銭入れ、時計のバンド、手袋、もちろん靴やカバンもである。つまり、黒い革ぐつならば、身につける革製品はすべて黒で統一する。これは革製品に限らず、金属製品でも同様とされた。ゴールドならゴールド、シルバーならシルバーでということである。
これはIVYの「ねばならぬ」から服装術の基本に昇格していまでもコーデの基本とされる。小物すべてまで、というとかなりたいへんではあるが、せめて靴とカバン、ベルト程度は気を遣いたいものである。
クルーソックス
ブレザーのカジュアルコーデでは、足元のソックスはクルーソックスというのが一般的であった。クルーソックスとは、生成りで昔ながらのふくらはぎまでの丈のもので、色はやはり白が定番であった。
ソックスにはドレス用とカジュアル用の2種類があるが、それぞれの目的がまったく違うのである。ドレス用では、もともと人前で素肌を見せるのは失礼である、という基本的思想があり、ソックスはパンツと靴のあいだの肌の露出を隠す働きを持っていた。
ここ10年くらいのトレンドで、ドレスアップでも丈の短いパンツにアンクル丈のソックスを履き、素足風なコーデが流行っているが、どこまでをドレス用というのか、という問題はあるものの、スーツにはすねの見えない丈のソックスを履いて欲しいと店主は個人的に思っている。
一方でカジュアル用のソックスについては、白が定番とはいうものの、目的が逆でチラリと足元をカラフルに目立たせるのが、おしゃれであるとされている。なので、高級なコードヴァンの革ぐつを、タイドアップして素足で履くのもありだし、全体のトーンとは真逆の色のソックスを履いて目立たせる手法はよく見かける。
ソックスについては、こだわっている人が意外と少ないので、いろいろと試行錯誤をしてこだわってみるのもおもしろいと思う。
派生コーデ
これで、IVYの基本コーデが完成し、マストアイテムと呼ばれる、
- ブレザー
- ボタンダウンシャツ
- チノパン
- ローファー
- コードヴァンのベルト
- クルーソックス
がそろった。
この基本コーデに対し、一つずつアイテムを追加し交換していくことで、かなり幅の広いコーデが可能になってくるのだ。
たとえば、ブレザーの代わりに「クルーネックセーター」を羽織れば、カジュアルで上品な感じを演出できるし、「トレーナー」にするともっと若々しく活動的な印象になる。
ブレザーはそのままで、パンツをチノパンからフランネルやサキソニーの「グレーウールのパンツ」にするだけで、ビジネスカジュアルのできあがりである。こんにちではこのスタイルでかなりの商談までこなせる感じだ。
逆にパンツをプレスなしの「コットンパンツ」や「ホワイトジーンズ」に替えれば、若々しいかためのカジュアル感を出せるのである。
靴も同じだ。「スニーカー」や「デッキシューズ」といったカジュアル系に振るもよし、秋ならスエードの「ダーティーバックス」や「ワラビー」などに替えるだけで、雰囲気ががらりと変えられる。
ボタンダウンシャツについても同じだ。ボタンダウンという形は変えずに、柄を「タッターソール」などのチェックにしたり、色をイエローやピンクに替えるだけでも印象ががらりと変わるのである。
IVYのコーデはこのように、基本アイテムを中心として、そのアイテムのどこかひとつを変えるだけで印象を変えることができ、またアイテムを一つひとつ加えていくので経済的にコーデの幅を広げることができるのである。これも流行に左右されないIVYのよさのひとつなのだ。