先週のマストアイテムである「クルーネックセーター」に引き続き、そのほかのIVYアイテムとしてのニットについて、見ていくことにしたい。
レタードカーディガン
IVYのルーツが米国東部のアイビーリーグ大学にあるので、学生特有のアイテムも多数取り入れられている。その代表格がスタジアムジャンパーとこの「レタードカーディガン」である。
素材は梳毛(※)製に限られ、厚めの5ゲージくらいのものが、アイビー的である。全体の色調はスクールカラーでまとめられていて、アームラインの入ったモノやレターの入ったモノは、スポーツ選手のシンボル・ウエアといわれる。
※梳毛とは毛足の長い羊毛を、引き揃えて短い羊毛を取り除き紡績して作るが、紡毛紡績に比べてはるかに複雑である。出来上がった糸は糸の太さが均一でスラリとしているのが特徴で、糸の撚りは強めでどの部分にも同じようにかかり、固く締まった感じがする。表面は滑らかで光沢感がある。
そのなかでもとくにレターカーディガンは学校のトッププレイヤーのみが着ることのできる名誉のあるアイテムなのだ。
鉄板コーデとしては、ボタンダウンシャツに生成りのコットンパンツをあわせ、足元はローファーで固める。このコーデを軸にして、ボタンダウンシャツとシューズを変化させていくだけで、おどろくほどのバリュエーションが生まれるのだ。
まずボタンダウンシャツであるが、色で遊んでみる。基本は無地のブルーである。アイビーリーガーは基本的に白いシャツは正装のときしか身につけない。イエローやピンク、レッド、パープルなどを組合せ、その日の気分で変化を楽しんでみるのも手である。
色の次は柄である。基本はタッターソールで赤系のストライブがいかにもアイビー的であるが、青系もなかなかである。またギンガムチェックなどもアメリカントラディショナルな雰囲気を醸しだしてくれるので、頼もしい存在である。
また、前開きのボタンダウンシャツに換えて、アタマからかぶる「プルオーバー型」のシャツをあわせるとアイビー臭プンプンである。
シューズも全体的なイメージに大きな影響を与えるアイテムである。定番のローファーをジョギングシューズに変えてみるだけで、ほかのアイテムを一切変えずにイッキにスポーツ選手的な雰囲気になる。
黒のコンバースのハイカットをあわせると、シューズひとつだけで「50's」っぽさが出てきて、映画「アメリカングラフティ」の世界にタイムスリップできる。こうなればアタマのなかは「ドゥーワップ」がグルグル回ってくる。
いかにもアイビーな印象を与えたいのであれば、デザートブーツの右に出るものはいないであろう。このデザートブーツ、もともとは英国陸軍が砂漠地を行軍する際にくつのなかに砂が入りずらいということで採用されたものである。
そのほかにもワラビーシューズや各種のスニーカー、そしてカジュアルなディテールのサドルシューズなども相性は抜群である。
このコーデのパンツをコットンパンツからリーバイスのブルージーンズ、それもノンウオッシュの501を裾上げをせずにロールアップさせて合わせるだけで、イッキに50's、それもワルっぽさがグッと増してくる。アイビー的コーデといえるか? かなり微妙な線でかなり上級者向けではあるものの、レタードカーディガンの着こなしとして、いつかはトライしたいコーデである。
現代においては、アイビーアイテムとしてしかほぼ存在することがなくなったレタードカーディガン、このまま消えてしまうには惜しいアイテムであることは間違えない。