マッキノークルーザー
IVY的カジュアルコートというと、ヘビーデューティーのカテゴリからも多くのすぐれたアイテムがチョイスされる。店主のいちばんのお気に入りは、マッキノークルーザーである。
呼び名は知らなくても、街中で見かけたことのある読者も多いのではないだろうか。まず赤に黒のラインのチェック柄の分厚いフラノ地が圧倒的な存在感を醸し出す。ショート丈で屋外での活動に適したデザインは、ポケットやボタン、襟などのデティールにもあらわれている。
マッキノーといえば、そのブランドはフィルソンである。ゴールドラッシュに沸く1897年にシアトルで創業を開始する。このウエアも他のアイビーアイテム同様、金の採掘現場という劣悪な環境での着用に耐えるよう、天然素材と機能的に妥協のない設計、そして縫製でその信頼を得ている。
その証拠に、米空軍・陸軍のスタッフ用として一部使用され、また米国の森林警備隊などの官に採用されるにとどまらず、木こりやハンター、冒険家など厳しい自然環境の中で真のクオリティを必要とする民間人にも愛され続けている。
わが国に入ってきたのは意外と古く、大正時代までさかのぼる。「わが国ではグランド・オーバーと称して大震災後の活動に専ら用いられた半外套で、その特徴とする点は前を両前とし、衿をアルスタ衿に製り、丈は半コートに等く帯附として釦で留め、専ら自転車用に供せられる。この外套は原則として格子柄マッキノウと称するフランネル風の羅紗を使用して製せられるもので、米国で主に青年の間に着用されるものである」と古い文献に載っていたそうである。
さて、コーデであるが、ヘビアイ的なコーデでもいいのであるが、やはりこのようなアイテムは、街着として合わせていった方が、しっくりとくるものである。コーデの幅はかなり広いので、ほかのアイビーアイテムとであれば、あわせ方に悩む必要はない。
たとえば、エンブレムがでかでかと入ったスクールトレーナーに、コットンパンツ、足元はランニングシューズやコンバースといった、アイビーリーガー登校スタイルの上に羽織るのもいい。
また、BDシャツにクルーネック、チノパンの足元にはワラビーといったこぎれいなアイビー青年風なコーデにもよく合う。
冬のアウターとしては、とても着こなしの幅を広げてくれる一着なのである。