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IVY Note No.32

ローファー

だれでも知っている革靴の入門用ともいえるローファー。このアイテムも発祥は米国のアイビーリーガーである。ローファーとは「無精者」という意味で、ヒモがないのですぐに履けるところが名前の由来だ。アイビーアイテムのなかではめずらしく、革靴でありながらドレスにもカジュアルにも履くことができる。

 

ローファーといえば、まずはじめに思い浮かぶのが、米国のブランド、「バス」である。バス社では、ローファーのことを「バス・ウィージャン」と呼ぶ。この呼称に世界的に愛されているこの革靴生誕のストーリーが詰め込まれている。

 

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1876年、ショージ・ヘンリー・バスが米国メイン州靴屋をひらいた。その50年後、ジョージはアザラシの毛皮でつくられた手縫いの奇妙な一足の靴を見る。社員が靴づくりの参考にと土産に持ち込んだのだ。そのアザラシの毛皮でつくられた手縫いの靴は、ノルウェーの先住民たちが自給自足のためにつくったモノであった。

 

ジョージはそのモカシンを参考にひもなしのスリッポンをつくり、1936年ローファーが誕生した。ウィージャンとはノルウェーを意味する。このモデルはローファーのオーセンティックモデルとして、現在も世界中から根強い支持を受けている。

 

ローファーのことを「ペニーローファー」と呼ぶことがある。ペニーとは米国の1セント硬貨の愛称で、もっとも少額の硬貨である。アイビーリーガーたちは、ローファーの特徴であるサドル(乗馬の鞍の意味)部にあるコインスロットに入れて遊んだのだ。ローファー人気は東部だけにとどまらず、西海岸を含め全米規模となった。

 

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ローファーがわが国で流行しはじめたのは、1960年といわれている。1964年の「みゆき族」では、ローファーはかなり履かれたようで、みゆき族の象徴でもあるツンツルテンのパンツ丈のおかげでローファーは目立っていたのであった。そのアイビー黎明期には、B.D.シャツ、コットンパンツには必ずローファーという三種の神器的存在になっていったのである。

 

その後、中高生の制服コーデである指定靴への採用などで、ローファーは日本人にとって革靴の入門用となった。1980年代当時、中高生との差別化をはかりたい大人たちは、ローファーではなく、タッセルローファーやキルトタッセルなどを履いてものであった。

 

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ローファーはいまやその色や形、素材などバラエティに富んでおり、ドレスにもカジュアルにも幅広く対応できる。アイビーやトラッドではなくとも、コーデに応じてさまざまな顔をもつローファーをあわせていくのも、応用範囲が広く、また楽しいものである。