ベーシックアイテム
「ふだんプレミアム」というコンセプトが総合電機メーカーから提案されたのは、たしか5~6年くらい前だったように記憶している。日常生活のなかで、ハイテクな白物家電の機能を活かして、生活の質を向上させようというものであった。
たとえばみそ汁などは、しっかりと昆布とカツオ節で出汁をとることで、市販の出汁入りみそとは違ったおいしさを味わうことができる。そういった必要なところにはひと手間をかけて、日常生活でプレミアム感を味わおうというような内容だった。
このCMを見たときに、ベーシックアイテムとその着こなしにも通じるものがあるなと感じたものであった。
ベーシックなデザインや色なのだが、いい素材が使われていたり、しっかりとした縫製やていねいに仕立ててあるなど、パッと見はフツーの洋服と変わらないのだが、着ている人だけがわかるフィット感や充実感といったものがある。
着こなしにおいてもあたり前のアイテム同士をあたり前の組み合わせで着る。いわゆる鉄板コーデというやつである。
こういったアイテムのチョイスと組み合わせは、洋服や着こなしそのものが奇をてらわない。主張もすることはない。そこにあらわれるのは、洋服を着ているその人そのものなのである。
若いころというのは経験が少ないこともあり、どうしても洋服を鎧のように着込んで、自己主張をしたくなるものである。そのような経験自体も、その人の肥やしとなっていく。
「四十而不惑(四十にして惑わず)」や「五十而知二天命(五十にして天命を知る)」という。経験を経ることで自分に自信が持てるようになり、日常のなにげない場面でも、存在感で洋服を着れるようになってくるときにこそ、人そのものの存在感をじゃましないようなベーシックアイテムが重要になってくのだと思う。
そのようなベーシックアイテムを身につけて生活する時間というのは、オン、オフ問わず、とても豊かでぜいたくな時間を過ごすことができるのではないだろうか。
店主にとってのアイビーとは、そのような価値を与えてくれる存在であると、最近とくに感じるようになってきた。
もっと自信を持って存在感をしめすことができる大人になりたいものである。