Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第37話)

結婚式

川崎工場の人事には、8年上の男性の先輩がいました。店主と同じように文系の新卒定期採用で入社し、工場人事に配属され、一時期購買にローテーションしていましたが、ほとんど人事一筋でやってきていました。

 

工場ではその明るいキャラクターも手伝って人気者で、どこの職場に行っても声を掛けられ、誰からも慕われているまさに「工場人事」って感じでした。

 

先輩は入社以来8年間、後輩が入ってこないため、人事ではずっと新入社員のまま一番後輩でした。店主は、入社当時先輩に連れられて、工場の各職場をまわって紹介されましたが、ようやくの工場人事への配属に、周囲からは「後輩がようやく入ってよかったね」の大合唱。先輩も手取り足取り非常によく指導してくれました。

 

店主の入社当時、先輩は、31才。いい年令でしたが、あまり浮いた噂がありません。工場の各職場では、気のいいおじさんやおばさんたちが「そろそろいい人いないの?」と常にそんな話題を提供するキャラクターでした。

 

そんな入社3~4年目のある日、先輩の結婚というビックニュースが工場中を駆け巡りました。ただでさえ人気者の先輩ですから、工場中その話題で持ちきりです。ただ、それまでそんな雰囲気もなく突然の話だったので、余計に噂に勢いが付いていました。

 

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先輩から詳しく話を聞くと、きっかけは先輩がお相手のお父さんとパーティーで偶然一緒になり、話しをしているうちに意気投合。ぜひ、うちの娘をもらってくれということで、トントン拍子に話が進んでゴールインという、なんともドラマのような展開に一段と工場中が盛り上がりました。

 

ちなみにお相手の名前は、春になると一斉に咲くピンクの花でした。先輩の苗字のどちらも当時あった銀行の名前そのものズバリで、「銀行合併か!」なんて言って冷やかされてもいました。(現在は、三井住友銀行りそな銀行になっています)

 

「で、結婚式、披露宴はどうするの?」次の興味は当然そこに移っていきました。「身内だけでささやかにする」との方針を聞いてみんな内心ガッカリ。でも当時川崎工場では、若手が結婚すると2次会を開いて、現場から開発から間接部門まで工場中のメンバーでお祝いするのが定番となっていました。

 

こうなると同じ職場の直属の先輩でもあるし、工場中の人気者でもあるので、店主が2次会を仕切らないわけには行きません。早速、仲の良い若手に声をかけ、プロジェクトチーム発足です。

 

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場所は、中華街の150人は入る大きな宴会場付きのお店を予約し、プログラムを考え、出し物を企画しました。司会は、当時川崎工場の結婚式2次会といえば、必ず司会をしていた電装課の班長にお願いをしました。

 

班長は店主が、新入社員当時、初めて出席した2次会でビンゴに当たった店主をみんなの前でイジリ倒して、イッキに工場中で有名にしてくれた大の恩人です。(19話参照)お願いしたら快く引き受けてくれました。

 

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当日は、なんと会場いっぱいの150人もの人が駆けつけ、会場は大盛り上がり。2次会自体の内容はごくごく普通の感じだったのですが、先輩の人柄と、それをネタに盛り上がろうというみんなの熱気で、とてもいい会になりました。最初は先輩もネタになるのはいやだと2次会自体をしぶっていたのですが、みんなからの祝福の言葉をもらってうれしそうでした。

 

会が終わった後、後輩としてしっかりやり切ってよかったとしみじみ思えた一日でした。

 

つづく…