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人事屋修行記(第51話)

格付け移行

合併2年目の1998年夏休み前、人事企画から資格と給与制度の規定など全体概要の説明がありました。おもに経営会議向けの資料をベースに新しい資格制度や給与制度の内容と現在の旧3社の従業員一人ひとりの格付けや給与を具体的にどのように移行するのかをまとめた資料です。

 

われわれ統一チームのメンバーは全員、食い入るような姿勢で話を聞きました。なにせ今から聞く内容を作業し、決められた結果に期日までに仕上げなければなりません。一言一句聞きもらすことのないよう、真剣な表情で会議室全体が異様な雰囲気であったことを今でも鮮明に覚えています。

 

「職能資格制度を踏襲して、現在の格付けを新しい資格制度の格付けに読み替え、移行していきます。給与は現給保障を基本として、手当額などの増減も含め、月度給与額の総額で見ることとします」これが、資格制度と給与制度移行の基本的な考え方とスタンスでした。

 

説明会での質疑応答を終え、チームメンバーだけでさらに議論は続きました。具体的な新しい制度と移行の概要が見えてきたところで、さて、それをどのように具現化していくかがわれわれのミッションです。

 

 

「現行の一人ひとりの資格等級と月度給与をベースに、新しい制度では、どのような格付けと給与額になるのかまずは、シミュレーションをして、置き換えてみることにしよう。そのプロセスの中で、情報の過不足など見えてくる課題を整理していこう」方針が定まるまでに時間はかかりませんでした。

 

チームのメンバーは、旧3社の人事、給与のシステムと実務に精通した第一人者のエース級が集まっていました。早速旧3社の個人別データをそろえシュミレーションを開始しました。

 

当時は、ようやく事務系社員には全員パソコンがいきわたった頃で、エクセルも97にバージョンが上がり、使い勝手がかなり向上していました。各社の給与データをテキストファイルにダウンロードしてExcelで合体し、新規定に照らし合わせた基準となる家族や住宅状況の情報を追加し、そのデータをもとに新しい手当額などを計算していきます。

 

それにしても合併は絶妙なタイミングでした。これがExcelがなかったならば、いったい4千人分の移行計算を手計算ですすめるのかと思うと、考えるだけでゾッとしました。

 

シミュレーションをすすめるなかで、各社の人事情報で管理しているデータだけでは、新しい規定にある基準の判定ができない手当があるなど、早速課題が山のように出てきました。

 

課題をメンバーで出し合って、ホワイトボードに書き出し、各課題についての対応方針をまとめます。課題ごとに担当と期限を決めて作業開始です。その後は、毎朝メンバー全員でホワイトボードの前に集まり、朝礼代わりに各担当課題の進捗状況を報告し、さらに新たに出てきた課題を共有して、対応方針を決めてまた各自作業に取り掛かります。毎日その繰り返しであっという間に一週間が過ぎていきます。

 

なかでも家族情報と住宅状況の情報が足りないことが最も大きい課題でした。現行の規定では支給基準の判定に必要ない情報なので、当然管理していません。今後は必要になるので、情報を集めなければなりませんが、基準情報をさまざまな角度から検討して、現在会社が持っている情報の中で、このケースは、別の情報の組み合わせで判定できるなどといった詳細を検討することで、全員から情報を集めなくてもようなるのでは、といった工夫をかなり突っ込んで議論し詰めていきました。

 

約1ヶ月程度の時間をかけて格付けの移行については、だいたいのメドと必要な作業が見えてきました。次は、その情報を何でどのように管理していくかを決めなくてはなりません。

 

つづく…