Cafe HOUKOKU-DOH

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IVY Note No.56

味が出る素材

洋服の素材のなかでいちばん好きなのはコットンである。安価で着心地がよく、使い勝手もとてもいいのだが、最大の理由は、着れば着るほど体になじんで味が出てくるところだ。

 

Tシャツやトレーナーなどは、新品よりもなんども着て、選択をくり返したモノの方が、体になじんでくるし、色が落ちてきたり、表面が若干毛羽立ってきたりと、イイ感じになってくる。

 

 

このイイ感じを「味が出る」と表現することがある。新品よりも着込んでいくことによって、より魅力度が増すのである。

 

デニム

味が出る素材の代表格としては、デニムであろう。もともとゴールドラッシュで沸いたアメリカの一攫千金を狙う労働者たちの作業着に使われていた。

 

コットンの糸をタテヨコに綾織にした生地で、タテ糸をインディゴで染め、ヨコ糸を染色加工をしないで織る。生地の裏側に白いヨコ糸が多く出るのが特徴といわれる。

 

デニム素材でつくった洋服の代表格は、なんといってもジーンズである。近年は技術の発達によって、最初からイイ感じにダメージ加工されたものも多数出回っていて、手軽にコーデを楽しむことができるが、やはり店主はオリジナルという1回も洗濯していないものを買ってきて、色落ちの工程自体を楽しむのが好きなのだ。

 

汚れがたまって着れなくなる限界まで我慢して、洗濯することにより、デニム素材の色の落ち方に独特のムラができるのである。これが味となり、またその色の落ちたジーンズそのものが、自身といっしょに時を過ごしてきたことがカタチとなっていると思え、手放しがたい相棒のような気分になるのだ。

 

 

革素材は、デニムのさらに上を行くといっても過言ではないだろう。ただその耐久性が桁違いに高いので、デニムのような時間軸で自ら味を出していくにはちょっと難易度が高い。

 

また素材のもつ存在感から、洋服として着る人や場面を選ばざるを得ない。革ジャンなどもアイテムとしては、ワードロープに入ってはいるものの、着る頻度が少なく、味が出るまでには至っていない。

 

ユニフォームのように毎日同じ革ジャンを羽織っていれば、数年でイイ感じになってくるのだろうが、さすがにそこまで腹はくくれない。結果、革素材でイイ感じになってくれるのは、毎日持ち歩いている小物に落ち着いてくる。

 

 

手帳がスケジュール管理のアプリになり、小銭入れや財布がQRコード決済のアプリに置き換わってくると、これら小物も使い込んでイイ感じに味が出ているモノを持つこともだんだんむずかしくなってくるのかもしれない。