サービスラインナップ
今週からサービスのラインナップを増やすことにした。具体的には、企業型確定拠出年金、いわゆる企業型DC(=Defined Contribution)の導入支援である。
約20年前に法律改正がありわが国に導入された企業年金制度である。制度の目的は、会社員の老後に向けた資産形成の促進にあり、国の年金制度を補完する位置づけとされる。
老後2千万円問題が話題になったが、国としては政策的に老後の資産形成をさまざまな角度から支援している。そのひとつがこの企業型DCであり、理解している人からすると、信じられないくらいのメリットがある。
具体的には、働いて給料を受け取り、貯蓄または投資して財産形成し、リタイヤしてからその資産を取りくずして生活するにあたり、大きく3つのメリットがあるのだ。
3つのメリット
ひとつめは、給料受け取りのときである。給料を受け取って積み立てる際に、積み立てる金額については、所得税や住民税がかからず、社会保険料を計算する際の基礎額からものぞかれる。
たとえば給料30万円の人が月々1万5千円を積み立てするだけで、所得税、住民税、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料が合計で約4千円も下がるのだ。1.3%の収入増である。(あくまでもモデルケースで試算)
2つ目として、積み立てたあとは、個人の判断で運用していくのだが、その運用益が全額非課税になる。通常運用益には所得税、住民税など20%の税金がかかるのだが、これが全額非課税。NISAのように限度額や期間の定めもない。
3つ目は受け取るとき。受取方法は一時金と年金が選べるのだが、一時金ならば退職所得、年金ならば公的年金扱いで優遇税制が適用され、税金が低くおさえられている。
クライアントからの相談
きっかけは、クライアント企業からの相談であった。人事制度全面見直しの一環として、DCを導入したいとのことであった。以前、人事の担当者さんが大手金融機関に相談したところ、「できません」と断られていて困っているのだという。
できないはずはないとお答えし、まずは情報収集からはじめると、1人からでも引き受けてくれる金融機関は確認できた。しかし、なぜ「できない」と説明したのだろうか。あまりにも不親切な対応である。
復習
人事制度の構築もだいぶすすんできたので、そろそろDCの検討に入ろうと考え、まずは復習の意味も込めて、参考書を探して勉強することに。
店主ははじめての仕事に取組むときには、会社員時代から参考書を1、2冊読んで勉強することにしている。そのまま適用できることはまずないが、世間水準のレベルや知見をアタマに入れておくことは、自身をアップデートするのに役立っている。
たまたま見つけた参考書だったが、これが大あたり。この手の参考書によくありがちな難解な法律用語をならべて、細かな導入手順などを説明するモノではなく、素人でもわかりやすく全体像が理解できる内容であった。
本の内容がよかったので、著者をネットで検索してみると、DCの導入支援をおもにあつかっている会社の代表者であった。HPを見ていくと、DC導入パートナーを募集しており、パートナー向けの研修を定期的に開催していた。
パートナー契約
クライアント企業からのリクエストに応えるためには、まさにピッタリのものである。さっそく研修に申し込み、受講した。参加者は10名弱であり、そのほとんどがIFA(=Independent Financial Advisor、資産アドバイザー)や保険代理店の方であった。
研修の内容は、基本的な内容であり、まずは概要を理解したうえで、伴走しながらフォローして覚えていきましょうというもの。たしかに企業型DCを入れるためには、金融というよりは、人事系の専門性のウエイトが高い。これは店主にとってなによりの収穫であった。
導入に必要な労働者代表への説明、同意書の取り付け、社員向けの制度導入説明会や就業規則の変更、届出、給与計算システムや明細の変更、そして投資教育など人事まわりの手続きが多い。
無事研修を終了し、先週パートナー契約を結ぶことができた。これで、クライアント企業にDCを導入する準備が整ったのだ。
DCへの誤解
大手金融機関から企業型DCの引き受けを「できません」と断られた事情について、研修でパートナー企業の方にたずねたところ、大手のビジネスモデルでは、加入者人数が少ないところでは、導入後の手数料収入が導入支援のコストに見合わないことや、そもそも支援できる専門家が少ないことが理由ではないか、ということであった。
企業型DCは、大企業でないと導入できない、とか中小企業は対象外と思い込んでいる方々で、導入したいと考えている方はぜひ、ご相談いただきたい。