Cafe HOUKOKU-DOH

~ホッとひと息的な読み物でブレイクするサイト~

人事屋修行記(第62話)

2000年問題

1999年の6月に本社へ転勤をしたのですが、この年のもっとも大きな話題は「2000年問題」でした。これは、西暦1999年から2000年に日付が変わるタイミングでコンピューターが日付を間違えて認識して、世界中で大混乱が起きるのではないかというものでした。

 

当時のさまざまなコンピューターシステムは、現在のようなPCを中心としたダウンサイジングへの過渡期であり、旧来のオフコンを使った各社専用のプログラムを用いたシステムが主流でした。

 

これら旧来のシステムの多くは、ハードディスクやメモリを容量から、できるだけ数値の桁数を少なくするために、日付は西暦の場合は下二桁のみで表現しているものがほとんどでした。

 

要するに1996年であれば、96というようにです。日付を使った計算もこの西暦でやるのですが、2000年になった瞬間に00年になりますので、日付の計算が誤った結果になったり、年数表示が0を表現せず、空白になったりというさまざまな不具合が起こることが予想されていました。

 

 

当然、2000年の10年以上も前からこの問題は指摘されていましたが、コンピューターのシステムというのは、たかが日付の年数の桁を二つ増やすだけでも、プログラムの修正と検証に膨大な工数とお金がかかるため、どこの会社も問題を先送りにしていました。

 

結局、1998年頃から世界中の会社が騒ぎ出し対応を始めたのですが、今度はプログラム修正のための技術者と取り合いです。SEやプログラマーの数は限られていますので、1999年に入るとプログラムの修正をお願いしても、技術者の確保ができず、すぐに対応してもらえなかったり、価格がはね上がったりすることが社会問題化しました。

 

店主がいた会社も情報システム部門を中心に、すべてのプログラムをたな卸しをして、対策が必要なプログラムを洗い出し、対応をなんとか完了しました。

 

そのようにすべての対策が完了していればいいのですが、世界中では、対応できていないものもあるのではないか、また、対応はしたが、修正ミスが起きてコンピュータートラブルが起きるのでないかとの懸念をみんなが持っていました。

 

特に原発や軍事施設なのでトラブルが起き、核ミサイルが誤発射されるのではなどというTV番組も放映され、心配な世論をあおっているかのようでした。

 

 

そんな中、日本中の企業では、1999年から2000年にかけての年越しに際して、本社の管理部門に危機管理対策室を設け、泊り込みで自社の社員や被害や設備などにトラブルが出ないかどうか、監視しながら年を越すという対応をとっていました。

 

店主の会社も新宿の本社に当時の総務部長と先輩が2人で泊まりこみ、各国の日付の変更と同時に、各現法の責任者に電話をかけ、異常がないかどうか確認を行うという対応をとりました。結局、当社は特になにもなく、世界中で無事に年を越すことができました。

 

世界中でも軽微なシステム障害やトラブルはありましたが、生命が危険にさらされるような事故などはなく、終わってしまえば、あれは一体何の騒ぎだったのかという感じでした。まあ、何事もなかったからいえることですが。

 

ちなみに当時の会社の従業員コードは上2桁で入社年を表していましたが、合併の整合のときに西暦の入社年から△1945をすることで、問題を先送りした。あと20年後に対応が必要になる予定だったのだが、2020年にその会社は吸収合併されて、問題は解消されれた。

 

つづく…