Cafe HOUKOKU-DOH

~ホッとひと息的な読み物でブレイクするサイト~

人事屋修行記(第64話)

事業譲渡(2)

受入れ条件を検討するにあたり、まずは双方の労働条件の比較です。人事制度を比較する場合、まず、骨格となる制度のフレームワークである、資格制度、昇給・昇格制度、報酬制度あたりからスタートします。

 

先方が作ってくれた比較表が送られてきて、そこに記されている先方の制度を参考にしながら自社の制度を記載し、差異を確認していきます。先方の資格制度は、グレード制と称している当時最先端の役割等級制度が導入されたばかりだということでした。

 

役割等級制度?当時店主は聞きなれないその名称に、戸惑ってしまいました。職能ではないことはすぐに理解できましたが、職務等級ではないのか、違うとすれば何が違うのかという疑問が浮かび、ちんぷんかんぷんです。すぐに本屋へ走り、資格制度の本や役割等級制度の本を数冊買い求め、勉強しました。

 

制度で大きな違いとしては、資格制度のコンセプトが大きく違っていたのと、カンパニー制を取り入れており、賞与については、通常の個人業績に応じた成績加算のほかに、カンパニーごとの業績に連動した業績加算があるということでした。

 

 

お互いの制度の比較を毎週のようにやりとりをしたり、打合せをしたりし、制度内容の理解と差異の認識ならびにそこから出てくる転籍する場合の課題などがだんだんまとまってきました。

 

その年の8月に事業譲渡に関する基本合意を締結し、その内容についてプレスリリースを9月にすることとなりました。ところがここで問題が浮かび上がりました。事業譲渡契約の締結やプレスリリースについては、当時の事業譲渡プロジェクトが主体で進めており、主に営業の担当部長が仕切っており、メンバーには人事の担当者が入っていません。

 

外向けに発表するタイミングで会社の従業員がまったく知らされておらず、外からの情報で初めて知るというのは、絶対NGです。でもプレスリリースをすることを我々が知ったのは、発表の前日でした。

 

先輩と店主は、「どうする」ということになったのですが、やはりどう考えても同じタイミングで社内周知をするのが必要だということになりました。まして、事業譲渡で50人もの人々が転籍してくるのです。会社として一日も早くシナジーを出すべく、融合融和に向けてお互いにがんばっていこうというメッセージはどうしても必要でした。

 

結局、先輩が徹夜して社内周知の文書を作成し、プロジェクト担当の専務に朝一番で確認をとり、無事発行することができました。プロジェクトもある程度の局面になってきた場合、我々人領域として積極的に入り込んでいくべきだと強く感じさせられた一件でした。

 

つづく…