ブレザー
アイビーのアイテムのなかでまっさきに挙げられる一着として、ブレザーを否定する人は少数派であろう。そのくらいブレザーはアイビーのマストアイテム中のアイテムである。
ブレザーの名前の由来というのも有名な話である。英国のボート部で活動していた大学生が、クラブウエアとして着ていた真紅のブレザーが川の水面に写っているのを見て思わず「Blaze!」と叫んだということが、まことしやかに語られ続けている。
そうすると、ブレザーのカラーのなかで、いちばん正統派で本格的なものは、赤色のブレザーということになる。
かくいう店主も、もう20年以上前にVANの赤色のブレザーを手に入れた。吊るしではあったものの、三つ釦中1つ掛けの正統派のディテールは、生地が赤色であるがゆえに、一段と貴重なものに見えてくるから不思議である。
この赤いブレザー、20年以上店主のワードロープのなかに吊るしてあるものの、出番は本当にすくない。これまで記憶にあるのは、両手で数えるくらいである。
赤いスイングトップやダッフルコート、マッキノウにカウチンセーターとこの色が好きでかなりの頻度で身に付けているのであるが、ことブレザーとなると、着ていく場所を選んでしまう。
仲間うちでクリスマスパーティーなどがあれば、気合いを入れて羽織っていくのだが、最近ではそのような機会もめっきり減ってしまった。
最近でいちばん最後に着たのは、10年くらい前の友人の結婚式の二次会だったと思う。その場でさえ、かなり目立ってしまい、新郎新婦に気が引けたのを覚えている。
しかしこの真っ赤なブレザーを手放す気はさらさらない。この手のアイテムというのは、ここぞというときに着ることができるよう、ワードロープの肥やしにしておくのが正しいと考えている。
それが、店主のような人間には安心感を与えてくれるのである。