個人別カレンダー
先日クライアント企業から一般の社員とは違った働き方が想定される社員さんへの対応について、相談があった。
くわしくうかがってみると、スポンサー契約をしているレーシングチームの技術的なフォローをするため、年間10数回予定されているレースには現地に同行する必要があるという。
当然レースイベントの本番は、日曜日に設定されており、一般の社員のカレンダーである土日を休日とする週休2日制では、多くの土日が休日出勤となってしまい、きちんと休みをとることができない。
このような働き方へは、会社としてどのような対応をしたらいいのか、というのが相談の内容であった。
サービス業などをはじめ、土日が出勤日に設定されている業種は多い。さらに、今回のケースのように、不定期に土日に仕事が予定され、さらにハイシーズンとシーズンオフがはっきりと分かれているような場合もある。
このような働き方には、「1年単位の変形労働時間制」という制度を活用すると、働く日と時間をフレキシブルに設定することができる。
労基法で働く時間は原則、1日8時間、1週40時間以内と定められている。これを超える場合には、三六協定という労使で協定を結んで、その時間分までは適法に働いてもらうことが可能になる。
しかし、1日10時間働いてもらい、4日働いて3日休むというような場合や、ハイシーズンは週6日働いて、オフシーズンなどは週4日出勤とするといったような傾斜をつけたカレンダーを設定したい場合などは、原則どおりの法規制では時間外労働になってしまう。
このような場合、一定の期間を平均して週40時間以内にすることで、所定内就業時間として働いてもらうことが可能となるのがこの変形労働時間制である。
この制度には、一定の実施要件がある。具体的には以下のとおりだ。
- 対象期間を平均し、1週40時間以内とすること
- 連続できる労働日数は原則最長6日まで
- 1日、1週の労働時間は原則10時間、52時間以内
上記要件を満たしたカレンダーを設定し、就業規則に変形労働時間制を適用する旨、定めたうえで、労使協定を締結し、監督署へ届け出ることで、適法に働いてもらうことができる。
この労働時間制を適用した場合の効果だが、業務の繁閑に応じて、1日の労働時間や1週の労働日、労働時間を設定できるので、繁忙期には長い時間働き、閑散期には短く働くことが可能になる。
働く社員としては、忙しいときにはしっかり働き、ヒマなときには休むといったメリハリのある働き方ができ、年間トータルで見るとしっかりと休みを確保できる。一方企業側としては、繁忙期に設定した上限までは働いてもらっても時間外労働にならないので、ムダな時間外労働を避け、効率的に働いてもらうことが可能になるのだ。
今回のクライアント企業でははじめての適用だったので、就業規則の変更からスタートし、カレンダーの設定、労使協定書の作成、締結ならびに労使協定届の作成、届け出とフルコースのメニューをこなす必要があった。
しかし、担当者さんやカレンダーを適用する職場のメンバーの協力、そして社労士さんとのフットワークのいい連携もあり、実施の意思決定から2週間足らずで監督署への届出を完了することができた。
ステークホルダーの努力に対して感謝するとともに、このカレンダーを適用することで、フレキシブルでメリハリのある働き方が実現できることを期待したい。みなさん、手続き、準備お疲れさまでした!