e人事システム
2006年に宮城の工場に転勤になったものの、人事課長という役責は変わらず、人事情報システムの更新プロジェクトも引き続き担当し、それも徐々に佳境に入ってきました。
人事情報システムは、従業員の属人情報の入れ物ですので、所属や評価といった入社後の人事管理項目をどのように処理して、データを最新状態にしておくかのフローを確立すればよく、給与計算システムについては、現行システムどおりの計算式を移管して、同じ計算結果が出せるようにチェックをすればいいので、どちらも手間は掛かりますが、そんなに難しい仕事ではありません。
事実、入社4年目の部下に実務のすべてをまかせ、店主は最初の実行計画を作るところと評価会の資料確認、それから彼女が判断に迷う部分のみ、意見を聞いて判断して決めるべきところを決めるだけで、ほとんど手を出さなかったように記憶しています。
ところが今回のシステム更新には、もうひとつ目玉というべき仕組みの新たな構築がセットになっていました。当時主流になりつつあった電子申請、決済というワークフローの導入でした。
世の中的には、すでにそんなにめずらしい仕組みではなかったのですが、当時の会社は製造業であり、国内4千人以上の従業員のうち、半数の約2千人近くが作業者としてラインにおり、パソコンなどは持っていません。それら従業員からの申請の取り込みをどのように行って、電子申請の仕組み導入の効果を高めていくのかがネックになっていました。
結局、最終的には紙の申請書との併用と、その入力作業を各拠点の人事に担当してもらい分散することで、仕組みの導入と効果を出していくことで進めることになりました。
仕組み導入にあたって、店主の自信を確かなものにしてくれたことがありました。合併前の旧会社時代に宮城地区と川崎地区の給与計算を統合したとき、それから三社合併時に給与計算を統合したときの2回にわたるシステム統合時に、年休申請に使う「休暇カード」なるものを廃止して、一方通行の「勤怠届」を導入しました。
導入当時は、変化を嫌う従業員からヤマのようなクレームや批判が届きました。「休暇カードであれば、一年間に1枚の紙で済むのに、勤怠届はそのたびに紙が必要であり、ムダである」というのが、ほとんどの人からの声でした。しかし店主は当時、情報のやり取りに使う申請書は片道であるべきだという信念をもって改善を進めたのです。
これが電子申請への切替え時に障害にならず、スムーズな切替えに貢献しました。仮に電子申請の導入時に休暇カードが残っていたら、現場は、電子申請への切替えと休暇カードの廃止という二重の変化を受け入れなければなりません。今回は、紙が電子申請になるだけの変化でしたので、特段反対する人もいません。
このときは10年近くも前に描いていたあるべき姿が是認されて、ひとりでニヤニヤしていました。
この電子申請システムは、ほとんどの従業員が使うことから、システムに呼び名をつけることにして、部内で公募をしました。3人のメンバーがアイデアを出し応募してくれて、厳正なる審査の結果、「e人事システム」という呼称が選ばれました。
電子(エレクトリック)の頭文字のeと良い人事管理を掛けた「e人事システム」の呼び名は、その語呂がいいこともあり、あっという間に従業員の間に浸透し、後には人事系のシステムすべての総称として呼ばれるようになったことからも、とてもいいネーミングだったと思っています。
やはり、みんなが呼んでくれる名前をつけて、それをしっかりと使ってもらえているということが、仕組みを入れたことが成功したなによりの証でした。
つづく…