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IVYおじさんの創業日誌

賃上げ圧力

賃金が上がり始めている。日経新聞によると23卒の大卒初任給は前年比2.2%増、+1.6ポイントで、2010年以降で最高の増加率。また今年度初任給引上げを行った企業は70.7%。前年度比+28.9%と急増しているそうだ。

 

横並びを行ってきたメガバンクも23卒から24卒にかけて、5万円程度の引上げを16年ぶりに行うという。大手商社などは30万円の大台に突入している。

 

 

背景にあるのは、競争力強化に欠かせないデジタル人材の獲得競争といわれているが、それだけではない。初任給だけでなく、管理職やシニアの給与水準も上がり始めている。働き方改革でスポットを浴びた女性やシニアの労働参加率も頭打ちとなってきて、中途採用競争も激しさを増してきている。

 

これまでわが国の企業は、不況時の過剰雇用を警戒して賃上げには慎重だった。しかし、生産年齢人口の減少により全業種で景気に左右されない構造的な人材不足による人材獲得競争が賃上げの圧力になっているのだ。

 

為替と給与水準の低さというダブルパンチで、今後は日本人が考えているようには、外国人労働者も集まらない可能性が高い。つまり賃上げ余力のない企業や賃金政策に失敗した企業は、事業の継続が不可能になり、淘汰されていくと考えるのは、ごく自然な流れだと思う。

 

これから起きること

識者によると、わが国では失業率が2%を下回ると賃金上昇が加速してきたという。高度経済成長末期の70年代前半、主要企業の賃上げ率は20~30%に達したそうだ。インバウンドが加速する2024年には2%を下回ることが予想され、理論的には2桁の賃上げが起きても不思議ではないという。

 

わが国ではバブル崩壊以降30年以上、3%を上回る賃上げは行われていない。ようするに定期昇給のみか、定昇に気持ちばかりのベースアップを実施した程度である。

 

(出所)労働政策研究・研修機構

 

店主も会社員時代、ベアを経験したのは30年間で片手におさまるくらいしか記憶がない。それも金額ベースで3桁止まりであった。

 

つまり現役の経営者や人事部門はもちろん、コンサルティングファームも経験がない事態が起こるということである。

 

過去わが国で大きく賃金が上昇したときとは、現在の経営環境はまったく異なる。そもそも人口減少が確実で、経済が成長するかどうかまったく予測ができない環境である。三種の神器といわれた「終身雇用・年功序列・企業内労働組合」なども遠いむかしの話しになっている。

 

春闘の妥結状況や同業他社の賃金水準をながめた横並び方式であったり、物価上昇率を基にしたベア率の決定などは、これからは通用しなくなるのではないか。

 

今年以降、わが国におけるあたらしい賃金政策を含めた、人事制度の模索がスタートすると考えている。店主もそれに合わせてしっかりと研究していきたい。