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人事屋修行記(第100話)

助っ人

2007年の4月に組織変更があり、店主は給与チームを専任でみるようにと、給与係は給与厚生課に格上げとなり、そこの課長をすることになりました。当時の給与チームは、人事情報システムの入れ替え作業が進んでいる中で、担当者の退職や産休などが続き、それを派遣社員でカバーしながら、なんとか実務を回している状態でした。

 

突然、ベテランの正社員から急ごしらえの派遣社員にバトンタッチするものですから、仕事に慣れるまでは時間がかかります。ただでさえ残業が多い職場でさらに残業が増え、チェックにさける時間も限られ、ミスも増えます。ミスが増えればそれだけ後処理の手間が増え、残業がさらに増える。そんな環境について行けずに派遣社員の方が短期間で退職してしまう。もはや完全に負のスパイラルに陥ってました。

 

そんな中、夏ごろに派遣社員の方がまた一人、突然退職することになりました。もはや一刻の猶予もなく、すぐに派遣会社の担当に電話をし、面談をセットしてもらうことにしました。

 

 

面談の場所は、工場の応接室でした。黒のパンツスーツを着た女性が、派遣会社の担当者に連れられて入ってきました。第一印象は気が弱くてどちらかというと大人しそうな感じです。

 

早速、面談がスタートしました。キャリアシートには、旅行代理店と食品会社での事務の経験が書かれており、総務や人事の経験はありません。もっとも当時は、経験者を探すというような余裕はなく、人物がよければOKといった状況です。おのずと質問も事務スキルやPCのアプリケーションスキルの内容が主体となって行きました。

 

この当時、給与計算は国内4千人分の給与における支給と控除のデータを誤りなくシステムに投入し、正しい計算結果になっているかチェックをする仕事です。その事務にはExcelの独特の使い方をマスターする必要があります。

 

また、当時入れ替えをしていた新しい人事情報システムは、基本的に投入データはExcelで作成したデータをCSVファイルにしてアップロードするので、ここでもExcelの基本的な操作スキルは欠かせません。

 

 

Excelの操作はどの程度できますか」、「関数などは使ったことありますか」、「他にアプリケーションは何が使えますか」などの質問に対し、その大人しそうな印象の彼女は、店主の顔をしっかり見て、にっこりとほほえんで元気にただ「がんばります!」とだけ答えるのでした。

 

そういうことかと半分あきれながらも、そこまで開き直って面談に答えられる度胸と受け答えからの印象が結構よかったので、まあ、面白そうだからきてもらうかと思い、面談終了後に派遣会社の担当者と話をしました。

 

「彼女どう思います?」との質問に担当者は苦笑しながら「前職の会社を辞める際にも結構引き止められたというので、人物的には大丈夫かと思います」とのコメントを聞いて、きてもらうことにしました。

 

仕事をし始めてみると、そのヤル気と責任感と仕事への取り組みは、正社員レベルを軽く超えていました。入社して1ヶ月くらい経ったとき、はじめてミスをしてしまったのですが、その時神妙な顔で、真っ先に店主に報告をしてくれた態度と大変なことをしてしまったという責任感の強さに、彼女にきてもらってよかったと実感しました。

 

その後、彼女は給与チームの建て直しに貢献してくれたのはいうまでもなく、その後は正社員となり係長としてリーダーシップを発揮してくれる存在になってくれました。

 

つづく…