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人事屋修行記(第147話)

フィロソフィー

人事部長になってまず、手を付けたのは、以前から課題感を持っていた経営理念の共有を強化することでした。経営理念については、1997年の三社合併時に作り直したフィロソフィーと呼ばれる経営理念があり、合併が落ち着いた2001年に当時の次世代経営幹部候補の若手管理職がゼロベースで見直したものでした。

 

経営陣は、事あるごとにフィロソフィーを引き合いに出し、原点に立ち返ってさまざまな話などをしていました。しかし、新たに作り直したフィロソフィーの周知については、作業服の胸ポケットに入れ、持ち歩いていつでも参照できる小冊子は作って配布していましたが、それ自体を各階層が自分ごとに置き換えて、解釈しなおすような活動は行っておらず、あるのは知ってはいるけど…というレベルにとどまっていました。

 

店主は以前から、人事として経営理念共有の重要性を、先輩や上司からなんども繰り返し聞かされていました。その教育のおかげで、理念共有については、かなりの数の他社事例などを勉強してきていて、どのような手段で理念共有を進めるべきかという持論を持つまでに至っていました。

 

 

社員満足度が芳しくなかった当時、やはり会社として一丸となって、ベクトルを合わせて競争力を強めていくには、最低限共有すべき価値観である経営理念を、トップから現場の最前線の一人ひとりまでが自分の言葉で語れるようにすべきと考え、早速人事で主催する階層別研修の全メニューに、フィロソフィーについてのワークショップを組み込むように研修担当にお願いをしたのでした。

 

ワークショップのファシリテーターは、当然フィロソフィーを自分の言葉で語れ、かつさまざまな階層や職種の社員が、自分の仕事に置き換えてその意味を考えられるようなディスカッションを作っていくことが求められます。

 

店主は自分がそこまでできるとは思っていませんでしたが、一方で社内にほかにそのようなことができる人物やポジションがあるかと考えると、これぞまさに人事部長の仕事の最たるもの、とも思われました。

 

ワークショップは店主を中心とした人材開発メンバーで手作りのメニューでスタートすることにし、ファシリテーターは、すべての研修について、店主が冒頭の2時間程度の時間をもらって担当することにしました。

 

数年に一度受ける階層別研修で、2時間程度考えたからといって、共有ができるとは思っていませんでしたが、そのきっかけを作る第一歩を踏み出すことに意義ありと考え、スタートしたのでした。そしてこの研修は、その後退職するまでの2年間、続くことになったのでした。

 

つづく…