バースデーメッセージ
人事部長になったことは、自分の組織運営をあらためて考えてみる機会になりました。店主がたどり着いたのは、部長と課長でマネジメントにおいて一番違うところは、メンバーに直接働きかけるのではなく、課長を通じて仕事を進めて成果を出していくということでした。
ずっと同じ会社の人事畑でやってきたので、メンバーは一緒に仕事をしてきた仲間がたくさんいました。一方で4年近く人事企画に行っていた間に、新卒や中途採用で人事や人材開発に新たに加わり、一緒に仕事をしたことがないメンバーも増えていました。
ひとり一人のメンバーと仕事で直接言葉を交わすのは、定期的に開催される企画の評価会くらいでした。それでさえ一方的に企画書の説明を聞いた後の質疑応答で、やり取りはどうしてもビジネスライクになってしまいます。
部全体でメンバー二十数名いましたので、飲み会を開くのもひと苦労ですし、やったとしてもメンバーの一人ひとりとじっくり話をするには、どうしても時間が限られてしまいます。
そこでメンバー全員の誕生日に手紙を書いて渡すことにしました。手紙をその後の日常会話やコミュニケーションのきっかけになればという単純な発想ではじめたのですが、これには思わぬ効果がありました。
相手の誕生日に手紙を書くわけですので、お祝いの言葉とともに、その人のいいところをほめる言葉も添える必要があります。そのためには、メンバー一人ひとりの仕事ぶりをじっくりと観察して、行動ベースの事実をとらえていなければなりません。
仕事中の職場で、そのようにメンバーの様子を観察することは意識をしないとむずかしく、通常は直接仕事でかかわるか、目立つメンバーにしか目が行きません。また、仕事をしているとダメなところにばかり目が行ってしまい、いいところにはなかなか目が行かないものです。
店主は特に人のいいところを見るのが苦手で、どんなメンバーに対してもいいところを見つけようという視点で部下を見るという経験は、本当に役に立ちました。
電子メールがこれだけ普及したいま、手書きの手紙はめずらしいこともあり、何年ぶりかで手紙をもらったとか、わざわざ素敵な便せんで返事を書いてくれるメンバーもいて、コミュニケーションのツールとしては、それなりに効果がありました。でもそれ以上に店主自身が新たな気付きを得た取り組みでした。
つづく…