メンタルヘルス不調
最近周囲でメンタルヘルス不調の話をよく聞く。以前の感覚よりも増えている気がする。国や企業が結構本気になって取り組んでいるにも関わらず、である。
メンタルヘルス不調とはなにか?人間は生活しているとさまざまな刺激を受ける。その中で「ストレスを生じさせる刺激」を受けたときに、人は身体面、心理面、行動面にいろいろな反応が起きるようプログラムされている。
たとえば緊張する場面で心臓がドキドキしたり、息があらくなったり、口が乾いたり、汗をかいたりという経験は、メンタルヘルス不調とは無関係の読者でも経験があるだろう。
これは人が生物として生存のために獲得したメカニズムで、火事場の馬鹿力と言われるものである。生存を脅かされるような危機的状況と認識すると、交感神経が活発になり、いわゆるアドレナリンが出て興奮状態になるのだ。
危機的状況で生存に必要な反応を生み出すものなので、心身に過度の消耗をもたらす。この状態が長期間続くと、内分泌系や免疫系に悪影響がおよび、体のいろいろな部分にシグナルとして症状があらわれるのだ。
職業性ストレスモデルで説明されるように、同じ刺激を受けても、それ以外のさまざまな要因もプラスマイナスの影響を与えるため、心身にあらわれる症状は人によってさまざまである。
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ここでひとつ重要なポイントは、メンタルヘルス不調は医学的に定義されている疾病であり、単純に不調者本人だけの原因ではない、という認識である。いまだ不調者本人のストレス耐性や気持ちの問題ととらえる傾向が散見される。
ちなみにメンタルヘルス不調の代表的なうつ病の有病率は2~5%と言われている。生活習慣病などの有病率を見てみると、高血圧で約12%、脂質異常や糖尿病が約3%、喘息が約1.5%、アトピーで約1%となっており、決して特殊な人の問題ではないということが言える。
「ストレスを生じさせる刺激」は人によってさまざまであり、またその人がどのように「認知」するかでも変わってくる。たとえばあたらしい仕事を担当することになったときに、「初めての経験で面白そう!」、「やったことがないのでできるか不安」といったようにだ。
ここらへんがメンタルヘルスケアの難易度を高めている。一方で不調者の発生は、安全配慮義務の観点のみならず、生産性の観点からも企業経営の重大なリスクである。
企業経営者はメンタルヘルス不調の本質をしっかりと理解するとともに、不調者の発生を「組織の健康度バロメーター」として、重要な管理指標のひとつとしてウオッチしていく必要があるだろう。