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人事屋修行記(第155話)

世間標準

2015年当時、前職では製品不良や仕損品の未処理、客先からの監査指摘などが頻発し、問題となっていました。どの案件もその原因を紐解いていくと、作業標準どおりの作業が行われていなかったり、ルールどおりの処理がなされていないなど、決め事が守られていないといった組織のゆるみともいえる内容でした。

 

一連の問題の根底に、店主は社内において成果を強調するような華々しい企画提案や発表ばかりを取り上げ、日々の定常業務や面倒な問題対応などを軽視する風潮を感じていました。そこで、役員会での意識調査結果分析の報告で、世間標準という言葉を使い、あたり前のことをあたり前にすることの大切さを再度徹底することが必要だと訴えました。

 

この内容が社長に響いたようで、その後品質保証本部の仕切りで、全社仕事の質向上会議なる会議体が立ち上がり、全役員と主要部長が出席して定期的に前出の問題案件への対応の報告や、仕事の質向上に向けた取り組みを報告することになりました。

 

役員や部長の中には、だれが世間標準なんて言い出したのか、などとウラで文句を言っているのも聞きつつ、当時製造業などの現場において、世代交代による技術の伝承がうまくいかず事故や品質不良などが頻発している状況と同じことが起きているという危機感が強くなっていきました。

 

 

毎年開催していたQCサークルの世界大会での基調講演では、ANA社内でヒューマンエラー対策についての研修を立ち上げた講師を招くとともに、あわせて全社の部長以上向けに、その講師から直接研修を受ける機会も設定しました。

 

ヒューマンエラーに関する研修は、そのメカニズムを論理的に理解することから始まり、人間工学や心理学の知見も入れながら、どのようにすれば、ヒューマンエラーを少なくしていくかが語られる一方で、人間が介在する限りヒューマンエラーはなくならない、ことを前提に仕組みを考えるというひと言がとても印象的でした。

 

給与計算などの間違わないのがあたり前の仕事を長くやってきて、なんとなく経験で持っている印象をしっかりと言語化してくれる賢い方がここにもいてくれたといううれしさとともに、仕事での間違いが人の命に直結する方々の、ヒューマンエラーに対する真摯な取組みにとても感銘を受けたのでした。

 

つづく…