6-1.1個/4千5百個ではなく1個/1個
筆者は新卒で自動車部品メーカーに就職し、人事部に配属されその後8年間、社員の給与計算を担当しました。最初はひとつの工場のみで500人分の給与計算でしたが、最終的には国内勤務の全社員4千5百人分を担当していました。
モノづくりの会社にいたので、品質への要求基準は非常に高く、事務職の仕事にも同じような基準を要求されました。そんな環境のなかで印象に残っている話があります。
「モノづくりを担当している製造ラインの社員にとっては、1日に1万個つくったうち1個が不良品だとしたら、それは1個/1万個かもしれないが、その不良品が市場に出回って、たまたまその製品を買ったお客さまにとっては、それは1個/1万個ではなく、1個/1個であり、それがすべてである。手にした不良品がつくった会社の製品そのものになってしまうのだ」という内容でした。
筆者はこの話を聞いたとき以降、自分の仕事に置き換えつねに意識して仕事に向き合うことにしました。
「筆者にとっては、1個の給与計算結果は1個/4千5百個だが、社員にとってそれは1個/1個であり、1ヶ月一所懸命働いた結果として会社からフィードバックされたメッセージそのものなのである」
担当者として毎日向き合っているとどうしても大量のモノやデータを扱っているので、少々の不良はしかたがない、と思ってしまいがちですが、その不良となった1個をお客さまとして受取った人の気持ちになって考えてみることは、忘れてはいけない大切なことだと思います。