継続投資教育
企業型DC導入企業には、加入者への「継続投資教育」が義務付けられている。DCは、自ら資産運用を行い、その運用結果を老後受取る仕組みである。適切な運用と資産形成にはただしい情報や知識は欠かせない。
店主が手掛ける企業型DCは、パートナー企業から春と秋の年2回、この継続投資教育のコンテンツが提供される。旬なテーマとDCについて、著名なゲストスピーカーを招いてのオンラインセミナーである。
毎回のゲストスピーカーは、有料セミナーなどでも活躍しているレベルの方々で、無料で参加できるのは、この企業型DCパッケージの大きな魅力のひとつである。
政府は「資産運用立国プラン」を2022年立ち上げ、家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる、「成長と分配の好循環」の実現を目指すとした。
それを受けて新NISA導入や高校家庭科での金融教育必修化が実施された。わが国では「投資」についてただしく理解している人の割合が低いとされ、その結果金融資産の構成が現預金50%、投信・株式10%となっており、米国の同13%、51%と逆転している。
日本人の多くの「投資」に対するイメージは、現物株の売買であることが多い。安価で株を買い、株価の高い時点で売って利ザヤを稼ぐというものだ。しかし投資の専門家にいわせるとこれは、「投資」ではなく「ゲーム」であり、イメージとしては「投機」に近いという。
お金に余裕があって、ゲーム感覚として楽しむのであれば否定するものではない。しかし「投資」の本筋からは外れている。では「本来の投資」とはどのようなものなのか。
投資とは、余裕資金で金融商品を購入し、運用益の最大化とリスクの最小化を同時に実現することにある。この目的をもっとも簡単に実現できるのが「投資信託」といわれるものだ。
投資信託とは、購入者から集めたお金をまとめ、運用の専門家が株式や債券なとを購入し運用する。運用によって得られた利益を購入者が購入額に応じて分配される金融商品である。
資産運用の王道といわれるのは、「長期・積立・分散投資」である。投資信託におけるこの王道について見ていくことにしよう。
長期
経済というのは波のように変動を繰り返す。好景気の後には不景気がきて、その後にはまた好景気となるように、変動を繰り返す。つまり時間軸が長ければ長いほど、波の影響を相殺できるのである。
積立
これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる。毎月一定額で株や債券などを購入する。この「一定額ずつ購入し続ける」というのが最大のポイントだ。安いときには多く買い、高いときには少なく買うことになる。
この買い方が、価格下落のリスクはメリットに、同時に価格上昇時のリスクに対しては高値づかみ(価格が高いときに買ってしまって安くしか売れない状態)を防ぐ効果があるのだ。
分散
世界に流通しているお金の総額はGDPの変動率分だけ増えたり減ったりしているものの、基本変わらないと考える。為替が変動したり、各国の株価や債券などが変動するのは、そのお金がより有利でリスクの小さい見通しの金融商品へ移動するだけなのだ。
なので、株と債券、先進国と新興国や日本と海外のように、反対の動きをする金融商品を購入することで、一方の運用成績が振るわないときに、もう一方は高い運用成績をだすので、リスクを分散することが可能となる。
「長期・積立・分散投資」を実現するうえで気を付けたいポイントは、余裕資金における時間軸である。
たとえば、老後の生活資金にするのであれば、十年単位での運用が可能となる。一方で住宅購入や子供の教育費などは、必然的に運用可能期間は短くなる。この期間にあわせた投資先の選択が必要になってくるのだ。
これまでわが国は長い間デフレを経験してきた。デフレ下では現金やほとんど金利の付かない預貯金でお金を持ち続けていても、目減りすることはなかった。
しかしインフレが高水準で持続するようになると、現金や預貯金でお金を持っていることは、相対的に価値が目減りしてしまう。大きなリスクなのである。ただしい金融知識を身につけ、リスクの最小化を目指したい。