Cafe HOUKOKU-DOH

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人事屋修行記(第178話)

WLB

転職して数カ月であたらしい工場に引っ越し、それまで鹿沼インター周辺の3つの工場に分散していた研究開発部門と本社機能を一か所に集約した。

 

工場の建屋はソニーの生産子会社の居抜きで、ワンフロアに役員の個室から本社機能までが入居しても、かなり余裕のあるとても広々としたものであった。

 

この化学メーカーは、以前にその文化としてポジションにとてもこだわる、という話を書いた。

 

店主などのように部下なし管理職の方が、肩書がなくてもマネジメントのわずらわしさがなく、報酬が同じであればこっちの方がのびのびできる!などといった発想からは考えられないものであった。

 

そしてその文化はあたらしい工場内のフロアにおける席の配置にも如実に表現されるのであった。

 

 

フロアの長方形の長辺となる窓際には、窓を背にして内側の部下たちの島を向いた、独立したデスクが、部長席としてずらりと配置され、座っているデスクを見ただけで部長であるということがわかるようになっていた。

 

前職では、そのように島から独立して配置されていたのは、役員クラスのみだったので、店主からするとビックリといった感じであった。

 

ひとつのフロアの長辺にずらりと並んだ20以上もの部長席、その光景は圧巻であるとともに、わずか千数百名の所帯で、こんなにも部長がいるということに違和感を感じた。

 

そしてそれ以上に衝撃的だったのは、その席に座っている部長さんたちの退社時刻の早さであった。ちょっと打合せなどが長引いて、19時ころフロアに戻ってくると、部長が誰もいなくなっていたのである。

 

部長連中がいそがしく、平日日中に時間が取れないので、休みの日を潰して会議があたり前のように設定されていた前職自動車部品メーカーから来た店主には、とても新鮮に感じられた。

 

それは、部長だけにとどまらず役員も同様で、18時過ぎまで役員さんが残っていることはとても稀な光景であった。

 

しかし、これが世間のすすんだ会社の働き方である、ということに気が付くのにはそう時間はかからなかった。

 

なぜなら、そのような働き方であっても、特段なんの支障もなく仕事は流れていった。そしてなにより業績は計画どおりに出ていたのである。

 

長い時間を働いた方が美徳、という悪しき習慣や考え方を、このような体験をすることによってようやく捨て去ることができた。

 

この経験は店主のキャリアにとって大きな気づきのひとつであったことは言うまでもない。社会人26年目ではあったが…。