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人事屋修行記(第179話)

資格取得

転職して2年目、会社にも仕事にも慣れてきたころ、産業カウンセラーの資格取得講座に通うことにした。前年に「メンタルヘルス研修講師認定講座」を受講し、資格を取得してみて、きちんと学んでみることの面白さを感じたためだ。

 

講座は仕事に支障のないように週末の日中に通う講座を選択。約7ケ月間土日を使う実技約100時間、座学約40時間の長丁場である。

 

メンバーは期間中ずっと固定のメンバーだ。さまざまなバックグラウンドを持った12名で、店主は最年長グループの一人であった。

 

講座の特徴は実技を重視していること。先輩カウンセラー3名が指導役として毎回参加してくれる。初回から1日みっちりカウンセリングのロールプレイでスタートした。

 

ロールプレイは、1グループ3~4名で行う。カウンセラー役、クライアント役、オブザーバー役となり、それぞれの役割を交代してひとつのロールプレイを3~4回ずつ回すのである。

 

 

このロールプレイの役割だが、実はオブザーバー役がポイントでいちばん勉強になる。カウンセラー役、クライアント役それぞれの行動を観察し、良い点と改善すべきポイントをしっかりとフィードバックする。このフィードバックを行うためには、きちんと理論を頭の中で整理して、それに照らし合わせて行う必要があり、自身のトレーニングにとても役立つのである。

 

カウンセリングのトレーニングを通じて、店主は2つの大きな気づきをもらった。ひとつは人の話を「聴く」ということ。もう一つは「人には気持ちがある」ということであった。

 

カウンセリングの基本は「傾聴」である。「聞く」のではなく「聴く」だという。「聴」の意味は、相手の話を関心を持って聴くこと。自然に音や声が耳に入ってくる「聞」とは使い分けをしている。

 

さらに傾聴で重要だと教えられたのが、「沈黙」の意味であった。人の話を聴いていると相手が黙ってしまうことがある。ふつうであればその沈黙の時間に耐えられず、思わず話をすすめてしがいがちだ。

 

 

しかしカウンセリングにおける「沈黙」とは、クライアントが考えを深めている時間など意味ある時間だと考えるのだ。

 

またロールプレイを通して、とにかくクライアントの心の動きを考え続けた。カウンセリングとしてあたり前のことなのだが、このトレーニングをすることで、会社員時代に同僚や部下の気持ちをまったく考えてこなかった自分に気が付いた。

 

相手に感情があることに気が付いていなかったのか、それともビジネスの厳しい現場で、そんなことを言っている余裕はないので、あえて気が付かない振りや見ない振りをしていたのかはわからないが、とにかく当時の店主の振る舞いや言動に対して、相手はどんな気持ちになっていたのか?を考えるきっかけを与えてくれたのである。

 

講座は無事終了し、翌年2月に行われた筆記試験にも合格。晴れて「産業カウンセラー」の資格をいただくことができた。資格で稼げるわけではないが、あたらしいスキル、知識を習得することは、とても刺激的であった。こういった学びはいくつになっても続けていきたいものである。