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人事屋修行記(第181話)

海外人事

ふたつめの会社にも海外拠点があり、駐在員を派遣していた。グローバル展開がすすんでいた自動車業界とは規模感はくらべものにならないが、それでも北米、中国、欧州そして東南アジアに進出していた。

 

駐在員は20名程度であった。大規模な生産拠点ではモノづくりに関する各機能ごとに駐在員を派遣している自動車部品メーカーとは違い、拠点長+αといった人数であり、店主の目からはこちらの会社の方がすすんでいるという印象であった。

 

駐在員がこの人数規模だと、担当する海外人事メンバーは1人である。担当していたのは、営業時代に海外駐在を経験し、帰国するとそのまま海外人事の担当に異動となった異色のキャリアの持ち主であった。というより、人事に海外人事を担当できる人材が皆無であったという方が正しい。

 

海外人事は、店主の担当する人事戦略部に属していた。それまで誰も担当業務の詳細について把握しておらず、一人ぼっちで相談する相手もなく、孤軍奮闘していた海外人事の担当者は、店主が上司になってすごくよろこんでくれた。ようやく仕事の話ができる人材に出会ったというのだ。

 

 

前職では海外駐在員を常時2百名程度派遣しており、さらに組合員は労組との協定で派遣期間が基本3年+延長2年であった。つまり3~5年程度で駐在員の交代が発生していた。

 

なので、海外人事も4、5名程度の組織で運営されていて、さらに給与計算については、給与計算の担当部門が行っていた。

 

一方でこちらの会社では「海外」と名前が付くものはことごとく海外人事に仕事が回ってきていて、駐在員の管理から給与計算、福利厚生制度や評価展開、労務費の請求まですべて担当者ひとりでこなしていた。

 

海外人事あるあるなのだが、とにかく仕事の中身がまったくわかっていない人事屋さんが多い。とくに海外人事担当者の上司になった人物に経験がない場合、仕事を見ないどころか、勉強して理解しようともしない。なので、仕事は担当者任せになってしまうのである。

 

海外人事の仕事の範囲はたしかに広い。駐在員を現地に送り出す仕事ひとつとってもビザの取得から海外への引っ越し、現地における住居の手配や銀行口座の開設など、国内の人事の仕事しか経験していないと、まったくわからないことだらけなのだ。

 

さらに駐在員給与の仕組みや特殊な税務、社会保険の特別な取扱いなど、人事の仕事でも広範囲の知識が必要となるのだ。

 

ここらへんが海外人事が人事屋さんから敬遠される大きな要因なのである。結局担当者はほかにできる人材がいないという話になり、固定化されてブラックボックス化していくのだ。

 

店主と海外人事の担当者は、それまで棚上げになっていたたくさんの課題について、優先順位をつけて整理を行い、現法ともコミュニケーションを密にして、担当者と二人三脚で課題を片付けていったのであった。