海外出張
2018年もあとわずかという秋も深まった時期、海外人事の担当者あてに中国の生産子会社から、人事制度を見直したいので相談に乗ってほしいとの連絡を受けた。
困惑している人事担当者に対して、まずはどんなことを考えているのか、話を聴くためのWebミーティングをセットするようにお願いした。
話を聴いてみると、いろいろと制度に起因する課題があり、それによってさまざまな不具合や弊害も起きているということであった。
当初は、Webミーティングベースでの支援をお願いされることを想定していたのだが、現法の社長からは、ぜひ一度現地にきて、実態をじかに見て欲しいとのことであった。
これまで海外人事は営業出身の担当者がひとりで見ており、そのほかの人事メンバーに海外人事を経験した人物はおらず、まして現法の制度見直しの支援など想像もつかない状況であった。
それが、日本の制度見直しも自前でやってしまう人事部長が入ってきて、話を聞けば海外人事の経験もあるらしい、とのことで、待ってましたとばかりにお願いしてきたのであった。
さっそく現状把握のための出張に出かけることにした。会社は深圳にあり、せっかくなので上海の営業拠点にも顔を出していくことに。2015年に前職で組合との海外オルグに同行して中国の全拠点を回ってきて以来、4年ぶりの海外出張である。
現地についてまずは、社長とあいさつがてら話をすると、今回の制度見直しは現地スタッフを主体としてすすめさせるので、専門性を踏まえたアドバイスをして欲しいとのことであった。日本から押し付けられたものではなく、自前で作り上げたということを大切にするのは重要なポイントだ。
さっそく現地採用の人事部長、課長、担当者らとのミーティングをスタート。制度設計の基本的考え方から話をはじめ、課題や実現したいことをたずねながら、ディスカッションを重ねていった。
海外現法の支援では通常、数回に分けて現地を訪れる。対面コミュニケーションの方が効率がいいものと、日本に持ち帰って検討や準備を行うものを切り分けして、効率的にプロジェクトをすすめる。
初回訪問では、前述のディスカッションの後、全体スケジュール、役割分担、次回までの宿題をまとめ終了だ。
この出張では、前職での現法支援の経験がとても役に立った。振返ってみると、1998年の南京での現法設立にはじまり、2000年にブラジル、2003年にタイと若いころに海外支援を経験させてもらった。この経験に基づいたコミュニケーションや提案は現法の駐在員からも評判がよかった。
日本の人事制度見直しでもそうだが、これら転職した化学メーカーで、思いのほか自分の存在を重宝してもらった経験が、自分のこれまでのキャリアに対する自信となり、その後の独立、起業の決断に対して背中を押したのは間違いない。
こうして転職先でも海外へ出かけるようになるのであった。