8-12.専門知識に対するスタンス
専門性を高めるには、しっかりと専門知識をおぼえないといけない、と思いがちですが、本当にそうでしょうか。
これからの時代、どの職種にも高い専門性が求められ、その専門性を使って会社に価値貢献していく。方向性としてはまったくその通りですが、これをそのまま突き詰めていくとどうなるか? 公的資格を持っている士業の方々に行きついてしまいます。
また変化のスピードがどんどん速くなっていますので、専門家のように知識習得のための勉強をしても、どんどん陳腐化してしまい、アップデートだけで相当な労力を要します。
ですから事務職のみなさんが専門知識に対してとるスタンスは、「各専門領域で社内SEがつとまるレベルを身につけよ」ということだと思います。SEとはシステムエンジニアのことですが、社内SEとは事業会社の情報システム部門に在籍し、おもに社内の各ユーザー部門とシステム開発を委託するITベンダーとの通訳を行います。
社内の事情に精通し、ユーザー部門の業務をユーザー以上に理解しつつニーズを聴き取り、それを各ベンダーの言語に変換して、ベンダーとコミュニケーションをして行く。そんな役割をまっとうするのに必要な程度の専門性があればいいと思います。
具体的にはたとえば人事が社員の取扱いについて検討を重ね、案を作成しました。最悪裁判まで行くことを想定し、この案で大丈夫か弁護士に確認することはよくあるケースです。
このときに人事の担当者に求められるのは、作成した案について、そのどの部分が法令のどの部分に該当し、こういう解釈で会社としては大丈夫と考えるが、その点について弁護士の見解はどうか? といった形で投げかけをします。このような弁護士と法令の解釈に対する議論がきちんとできるくらいの知識は必要だということです。
基本的に外部の委託先というのは、余計なことはせず、尋ねられたことに対してのみ見解を述べます。それも自分たちの発言がもとでトラブルになって責任を追及されないように、つねに真っ白か、ほぼ白という答えしかコメントしません。ですので、発注側も専門性の土俵で自分たちが実現したいことの方法論を対等に議論できるくらいの理論武装は必要だということです。
一方で最新のトレンドや細かい内容までは知識として押さえておく必要はなく、そこは専門家におまかせすればいいと思います。そのように外部の専門家としっかりと役割分担ができる専門性を身につけたいものです。