人事制度見直し
化学メーカーに転職して、人事制度の見直しを最初のミッションとしてすすめてきたことはすでに書いた。2016年9月に転職し、その年の12月に見直し計画を経営会議で承認してもらい、スケジュールの遅延はあったものの、約1年後の2018年4月に見直し後の制度リリースにこぎつけた。
このタイミングでは管理職のみの見直しであった。一番のポイントは報酬制度の見直しであり、役割等級制度の名残りを引きずっていた等級間の報酬レンジの重複解消と年俸制の導入であった。
従前の制度では、賞与支給額の計算式が確定利益の一定割合を賞与原資として確保し、それを等級間で配分する方式をとっていた。なので、ふたを開けてみるまで予定年収額が確定しない。
この仕組みには2つの課題感を持っていた。ひとつは予定年収が確定しないため、部課長クラスの管理職を積極的に中途採用するにあたり、年収額提示でアドバンテージがあった。
さらに、経営幹部である管理職が、上場企業では常識のステークホルダーとの約束である中期計画どおりの収益を確保し、それを前提とした予定賞与額を受け取る、という意識が希薄であった。利益がでたら賞与はご褒美としてもらえるといった感覚に店主は当時とても違和感を感じていた。
それら課題を解消すべく年俸制を導入した。報酬は年俸額をまず決定し、それを予定賞与4ケ月を含む16等分して月額報酬を決定した。
従来の賞与支給日には、冬夏2ケ月ずつの業績年俸を一旦支給し、3月末で締まる収益をテーブルにあてはめ、業績年俸の過不足の調整を夏に行うという方式にした。
当然、業績年俸の支給テーブルは、中期計画における単年度の予定業績値をセンターに置き、計画以上の収益が出ればプラス、でなければマイナスという設計にした。
文章で書くとごくあたり前の内容なのだが、この見通しが甘かった。上場して最初の中期計画だったこともあり、その実現可能性については、前職の自動車部品メーカーと同水準に考えることは無謀だったのだ。
結果的に人事制度見直し初年度の業績は大幅な計画未達であった。その結果が反映される2019年6月の業績年俸は、予定額の2ケ月分から業績未達によるマイナス分を反映し、半年前に支給された金額から大幅な減額となってしまったのだ。
人事制度見直し直後の賞与は、好業績を反映して大幅なアップとなるようタイミングを冷静に判断する必要があるのだが、その定石を外してしまったのだ。大幅ダウンではいくら原因が計画未達であっても、制度が悪いとなってしまう。
逆に好業績を反映して賞与が増えたということになれば、あたらしい仕組みはいい制度だ、ということになる。
こうして業界や会社ごとの収益計画に対する見方や捉え方は、一筋縄ではいかないということを勉強させられたのであった。