Cafe HOUKOKU-DOH

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IVYおじさんの創業日誌

前職同僚との会食

先日、前職の同僚2人と会食をした。そのうちの一人は、店主が退職して以来、実に4年半ぶりの再会となるバックオフィス部門の部長職の男だ。

 

きっかけは、彼から届いた1通のメールだった。「転職を決めた」と、そこには書かれていた。会って話を聞くと、これまでのキャリアと同じ専門分野で、次の会社からは執行役員としてオファーを受けたという。店主と同年代の彼が、新たなステージへ大きな一歩を踏み出す。その報告が、旧交を温める機会をくれたのだ。

 

美味しい食事に舌鼓を打ちながら、3人で互いの近況を語り合った。彼の決断は、僕にとって非常に示唆に富むものだった。

 

「会社員として働けるのは、あと10年くらいだろう。新しい場所でひと仕事やるには、ちょうどいい期間なんだ」

 

彼はそう言って、晴れやかな顔で笑った。ここ15年ほどで、転職市場における年齢の壁はずいぶん低くなったと感じる。かつては転職における年齢の壁があったが、今や専門性や実績があれば、年齢は関係なくなってきたと感じる。彼の言葉は、会社員として働ける期間を見据え、新しい職場でひと仕事を成し遂げるのに最適な時期であるという彼の考えを反映していた。

 

 

ひところは、会社を辞める人間に対して、どこか「裏切り者」や「敵前逃亡」といったレッテルを貼るような空気があった。退職した者と現役の社員が個人的に付き合いを続けることすら、タブー視される雰囲気が確かに存在したのだ。それに比べれば、ずいぶん風通しは良くなった。それでも、退職後もこうして関係が続くのは、まだ一握りかもしれない。

 

では、退職後に関係が続く人と、そうでない人を分けるものは何だろうか。その人の思考や性格も大きいだろうが、一番のポイントは、同僚として働いていた時の「相手に対する捉え方」にあるのではないか。

 

単に「同じ会社でたまたま机を並べている同僚」として見ていたのか。それとも、「一人の人間としてリスペクト」していたのか。その違いだと思うのだ。もちろん、皆大人なので、在職中にそうした本心を露骨に表に出すことはない。だが、組織というタガが外れた途端、その人が相手をどう見ていたかが、その後の付き合い方にはっきりと現れる。

 

あれほど好意的に接してくれていた人が、会社を辞めた途端に手のひらを返したように冷たくなった、という話は珍しくない。むしろ、そのパターンの方が多いとさえ感じる。

 

一方で、今回のように、わざわざ連絡をくれて食事に誘ってくれる人もいる。「会社を辞めたら関係は終わり。なぜなら、たまたま同じ組織にいただけだから」という考え方も、一つの割り切り方として否定されるものではない。

 

世間は意外と狭い。特に、同じ業種や業界、専門性の領域で生きていれば、どこかで必ずつながりが生まれるものだ。だからといって、退職後も無理に関係を維持すべきだ、などと言うつもりは毛頭ない。

 

ただ、人付き合いもビジネスも、結局は人と人とのつながりから新たなきっかけが生まれてくる。これは、会社員という立場だとなかなか実感しにくいかもしれないが、独立して一人で仕事をしてみると骨身にしみてわかる。信頼できる人からの紹介で新たに出会う人は、やはり信頼に足る人物である可能性が高い。そうした「信頼の連鎖」が、楽しくて質の高い仕事や、豊かな人間関係を築く確率を飛躍的に高めてくれるのだ。

 

彼は有給休暇の消化もままならないらしい。嬉しい悲鳴で、送別会のお誘いがひっきりなしに入っているそうだ。来月から、新しい会社での日々が始まる。

 

「また是非やりましょう」

 

そう言葉を交わし、楽しい会はお開きになった。組織を離れてもなお、こうして付き合える関係性の素晴らしさをしみじみと感じながら、帰路についた。