任意継続被保険者
会社員を辞めて、まず店主が痛感したのは「会社に守られていたありがたさ」だ。店主のような人事部門にいた人間ですら、会社がどれだけ手厚くサポートしてくれていたかを、退職してはじめて知ることになった。
特に、毎月当たり前のように引かれていた社会保険料。在職中は「なんでこんなに引かれるんだ…」と悪者扱いしていたが、その裏で会社がどれだけの金額を負担してくれていたのかを、退職後の手続きでまざまざと見せつけられることになったのだ。
一般的に、健康保険、介護保険、厚生年金、そして労働保険(雇用・労災)を総称して「社会保険」という。サラリーマンなら、会社が保険料の半分以上、場合によっては全額を負担してくれていることを、退職するまでほとんど意識しないものだ。
たとえば、毎月の健康保険料が2万5千円だったとすると、会社も同じ額を支払ってくれている。つまり、会社を辞めると、この会社負担分も合わせて全額自分で支払わなければならない。
退職後の健康保険は、国民健康保険に加入するか、もしくは退職前の健康保険に「任意継続被保険者」として残るかの2択になる。店主が選んだのは任意継続だった。国保に比べて保険料は少し割高になるものの、在職時と同じ給付やサービスを受けられるのが大きなメリットだった。
しかし、単純に保険料が倍になるかというと、実はそうでもない。ここにはちょっとした「カラクリ」がある。在職中の保険料は、給料の額に応じて決まる。給料が高いほど、保険料も高くなる仕組みだ。ところが、任意継続の場合は、所属していた健康保険組合全体の平均給与で保険料が決まる。
そのため、在職中の給料が高かった人ほど、自己負担分が増えるとはいえ、保険料が下がることが多い。店主も退職前と比べると9ランクも下がっていた。(それでも、自己負担分は増えたが…)

年が明けて間もない1月5日。まだ松の内も明けていないこの時期に、健康保険組合から速達の特定記録郵便が届いた。何事かと思って開けてみると、任意継続の保険料の納付書だった。支払期限は1月18日。このスピーディな対応には、正直驚いた。
任意継続の最大のポイントは、期限までに保険料を納めないと、問答無用で資格を剥奪されてしまうことだ。まさに「一発退場」。店主は、コロナ禍で基礎疾患も抱えていたので、保険証がないと落ち着いていられない。
郵便が届いてから1時間も経たないうちにネットで振り込みを済ませ、さらに「振り込みました!保険証の発行よろしく!」というメールを事務長宛に送った。
会社員時代には会社が手続きを代行してくれたが、退職してからはすべて自分で責任を持ってやらなければならない。この納付書のスピード感と同じくらい早く新しい保険証が届くことを願いつつ、会社員という身分のありがたさを、改めて痛感したのであった。
つづく…