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人事屋修行記(第200話)

iDeCo

前職の化学メーカーには、確定拠出年金制度があった。1962年に法制化された適格退職年金制度の廃止を受けて、2001年から新たにスタートした制度であり、その名のとおり、従業員の退職後に年金を受け取るために、会社が毎月決まった掛け金を積み立てていくものだ。

 

一方、従来の適格退職年金制度の受け皿として、確定給付年金制度も同時にスタートしたものだ。こちらは逆に年金として受け取る金額があらかじめ決められていて、将来支払うその金額に見合った掛け金の積み立てと運用を会社が責任をもって行うものである。

 

確定拠出年金はDC(Defined Contribution Plan)、確定給付年金はDB(Defined Benefit Plan)と呼ばれる。新たにスタートしたDCは、従業員自らが投資商品を組み合わせ運用する仕組みで、運用次第では会社が積み立てた掛け金が増減するという、従業員が運用責任をもつ仕組みだ。

 

それ以外にもメリットがあり、DCがある会社間の転職であれば、積み立てた残高は引き継ぐことができ、基本的に勤続年数が長くなればなるほど支給率が大きくなるDBにくらべ、転職によるデメリットが少なく、雇用の流動化を促すという面もあるのだ。

 

DCはさらに制度がない会社や自営になっても、個人で引き続き積み立てることができる。この仕組みは iDeCo といい、その掛け金は全額社会保険料控除として直接控除(金額がそのまま控除額となる)されるので、節税対策として非常に有効な選択肢の一つである。

 

 

当然店主も個人型に残高を移管しつつ、引き続き積み立てることとし、金融機関に頼んで資料を送ってもらった。送られてきたのは、化学メーカーに入社してDCに加入したときと同じ分量のスターターキットであった。

 

スターターキットは厚さ3~4cm程度の資料なので、当然読む気も起きなかった。店主は当時、投資には興味もほとんどなく、完全な素人であった。

 

しかし、前回投資商品の組み合わせを決めたときには、当然なんらかの意思決定をしているはずなので、まずは、現状の組み合わせを確認してみることにした。

 

投資商品は大きく、元本確保の有無で2つにわかれる。つまり積んだ掛け金が保証されるかされないかだ。確保ありは預金や保険などである。確保なしは投資信託と呼ばれるもので、株式と債券がそれぞれ国内、先進国、新興国と分かれており、その組み合わせでリスクとリターンなど性格が決まる。

 

前回は、各投資市場のベンチマークに連動して株式、債券を組み合わせて運用する商品で、株式の割合が少ない、どちらかといえばローリスク、ローリターンをねらう投資信託2つを選んでいた。

 

2年半後の運用成績が利回り約3%だったので、まずはこの考え方でよしとし、同じような商品を選ぶこととした。ただし、加入後の5年近くは、まったく運用実績を確認していなかったので、今後はマメにチェックし、投資対象を見極めていかなけらばならない、と反省した。

 

商品を選んだら、必要事項を移管届と加入届の2枚の用紙に記入し、自分で選んだ金融機関に送って完了であった。ただし、この移管は、退職日から5ケ月以内に完了する必要があるので、注意しなければならなかった。

 

これで、退職後の To Do リストを一つ消し込むことができた。はやく全部終わらせてスッキリしたいと思っていたのであった。