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HD創業日誌

労務相談

クライアントから、社員の行動や振る舞いにどう対応すべきか、という相談を受けることが増えている。いわゆる「労務相談」だ。最近はメンタルヘルスの不調に関するものが目立つが、内容は実に多岐にわたる。

 

こうした相談に「唯一の正解」はない。表面的な事象だけを捉えれば、ある程度パターン化できるかもしれない。しかし、その背景にある環境や、そこに至るまでの経緯を考慮すると、取るべき対応は全く変わってくる。

 

だから、メールの短い文章だけで判断するのは危険だ。問題が深そうだと感じたときは、すぐに電話かWebミーティングで、周辺の状況や経緯を詳しく聞くことにしている。わずか5分、10分の対話でも、問題が立体的になり、本質が見えやすくなるからだ。

 

ふと、こうした相談に対応する能力はどこで身につけたのだろう、と考えてみた。新卒で入社したのは自動車部品メーカーで、以来25年間、人事の仕事に携わってきた。特に最初の10年間は、工場の人事に配属され、日々、現場で働く多くの社員と顔を突き合わせていた。

 

 

一つの工場には500人から1000人。同じ地域に複数の工場があり、担当する社員は3000人近くになった。これだけの人がいれば、当然、毎日何かが起こる。「今日は珍しく予定がないな」と思って出社すると、朝一番に現場の係長や課長が血相を変えて駆け込んでくる、なんてことは日常茶飯事だった。

 

問題が発生したとき、まず立ち返ったのは「就業規則」と「労働基準法」だ。今よりも労働関連の法律が少なかった時代、まずは会社のルールである就業規則にどう書かれているかを確認する。そして、その根拠となっている労働基準法が、どのような意図で定められているのかを解釈し、現場の判断に適用していく。その繰り返しだった。

 

経験したことのない案件が持ち込まれると、それこそ大変だ。就業規則労働基準法の本、労務相談のQ&A集など、関係しそうな資料を片っ端から読み込み、問題の本質を見極め、対応の基本的な枠組みを考える。一つの案件に半日、ときには丸一日を費やすこともめずらしくなかった。もちろん、他にやるべきルーティンの仕事も山ほど抱えている。それでも、目の前の案件に向き合い、必死に調べ、考え抜いた。

 

 

そうして導き出した結論で対応し、うまくいくこともあれば、失敗することもあった。当時はインターネットも普及しておらず、会社にある数少ない参考書を引っ張り出したり、先輩たちが過去に対応した案件の記録を読み返したりしながら、手探りで進むしかなかった。

 

この経験のおかげで、物事をまずルール(就業規則や法律)の面から捉え、基本的な方針を立てるという仕事の進め方が、店主の体に染みついた。忙しい中でも現実と向き合い、必死にもがいて身につけた知識と経験が、間違いなく今の自分の血肉となっている。

 

独立してからは、制度や組織、人材開発といった分野で役に立てればと考えていた。しかし、蓋を開けてみれば、一番多かったのは、日々現場で起きる「困りごと」に対する相談だった。大手コンサルタントでも、弁護士でも、社労士でもない。この領域こそが、店主のニッチな得意分野なのだと、改めて痛感している。