ここのところ、メンタル不調に関する記事やSNSの投稿を目にする機会が多い。特に気になったのは、先週日曜日の日経本誌の記事だ。調査によると、メンタル不調による経済損失は年間約7.6兆円にものぼり、これは日本のGDPの1%強に相当するという。がんによる損失が約3兆円、タバコが約2兆円と聞けば、その金額の大きさがわかるだろう。
メンタル不調で外来を受診する患者数は、この20年で倍増しているという。その背景には様々な要因があるが、時代の変化として見過ごせないのがインターネットの存在だ。
ある調査では「思春期にインターネットを使いすぎると、メンタル不調のリスクが高まる」と指摘されている。睡眠時間を削り、SNS上での人間関係を過度に気にしてしまうことが原因だという。たとえば12歳時点でネットを使いすぎた場合、16歳になった時の精神的な症状のリスクが1.65倍、抑うつが1.61倍に高まるというデータが示されていた。
この傾向は、別の調査結果とも一致する。日本生産性本部が実施した企業アンケートでは、心の病が最も多い年齢層は10代から20代で、全体の37.6%を占めた。これは2014年の調査結果(18.4%)から2倍以上に増えている。店主自身の肌感覚とも、この結果は合っているように思う。会社や組織のやり方に馴染めず、苦しんでいる若手が増えていると感じるからだ。
なぜ、若手のメンタル不調が増えているのか。やはり育ってきた環境の影響は無視できないだろう。店主自身も含め、人はどうしても自分の経験を基準に物事を考えがちだ。とくに、会社のマネジメント層や幹部に就いている人々は、これまでのやり方で成功してきた経験がある。だからこそ、自身の経験に自信を持ち、それを拠り所にするのは自然なことかもしれない。
しかし、時代は確実に変化している。人とのコミュニケーションのあり方も、時代に合わせてアップデートしていく必要があるのではないだろうか。旧来の価値観や成功体験だけを押し付けていては、うまくいかない時代になっている。
多くの企業は、採用や社員育成、離職防止には多額の費用と労力をかけている。その一方で、社員のメンタルヘルス対策となると、どこか後回しにされているような印象を受ける。しかし、先ほどの調査結果が示すように、メンタル不調による経済的損失はGDPの1%を超える規模なのだ。
これは、個人の問題として片付けられる話ではない。企業の生産性向上という観点からも、社員のメンタル不調によるパフォーマンス低下や休職といった問題に、もっと真剣に目を向けるべきではないだろうか。個人の心の健康を守ることが、結果として組織全体の力を高めることにもつながるはずだ。社会全体でこの問題に向き合う時が来ているのではないだろうか。