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HD創業日誌

幸福のU字カーブ

先日、朝のニュース番組を見ていると、オープニングでアナウンサーがこんなトピックを話していた。

 

「人生の中で一番きつい年代はどこか?」という問いに対し、統計的な回答があるというのだ。アメリカの大学の研究によれば、世界132カ国で調査した結果、人生の幸福度が最も低くなる「人生の底」は、統計的に47歳から48歳なのだそうだ 。

 

それまでの「下り坂」を越えると、幸福度は再び上昇に転じ、80歳を超える頃には18歳の時の幸福度を上回るという 。

 

 

この「幸福のU字カーブ」という話を聞いて、店主は思わず自分の47、8歳の頃を振り返ってしまった。 ちょうど、前々職の自動車部品メーカーで人事部長をしていた2年間と重なる。

 

思い返せば、あの時期はまさに「人生の底」という言葉がしっくりくるほど、公私ともに重圧のなかにいた。まず頭を悩ませていたのは、なかなか引き上がらない社員意識調査の数字だった。

 

当時の会社は、あたり前のことが出来ておらず、問題が頻発するなどし、経営陣は危機感が抱いていた。店主は人事部長として、様々な施策を講じていたのだが、アンケートの結果として返ってくる数字は冷徹だった。現場の不満や将来への不安が数字に透けて見え、自分の力不足を突きつけられているようで、毎晩のようにデータとにらめっこをしていたのを覚えている。

 

そんな苦悩の最中、さらに追い打ちをかけるような大きな局面を迎える。生産の海外移管に伴う、国内生産能力の過剰問題であった。会社として避けては通れない道ではあったが、店主は責任者として、国内社員の約1割にあたる400人の早期退職を企画・実行することになった。

 

「早期退職」と言えば聞こえはいいが、要は長年会社を支えてきた先輩や仲間たちに、自ら身を引く決断を促す仕事だ。面談の場での重苦しい空気、去りゆく人々の複雑な表情。あの頃の、精神的な疲弊と張り詰めた緊張感は、今でも鮮明に蘇ってくる。

 

その後、店主は転職を経て独立した。あれから数年が経ち、今の自分を振り返ってみると、あのニュースで言われていた「幸福度の上昇」はなんとなくわかる。

 

今の生活は、あの頃とは一変した。収入面では、ようやく会社員時代を若干ではあるが超えるくらいになってきたところだが、何より質的に大きく異なるのは「時間の使い方」だ。

 

会社員時代、あれほど拘束されていた時間は、今や自分の裁量の中にあり、時給に換算すれば当時の3倍以上になっている実感がある。そして何より、仕事そのものが楽しい。自分自身で「やる」と決めた仕事だけを引き受け、素晴らしいクライアントの皆さんに恵まれている。

 

仕事だけでなく、プライベートの時間もできた。仕事仲間から憧れの眼差しを向けられたことがあったが、かつての自分が聞いたら驚くことだろう。趣味のプラモ製作に没頭したり、夕飯は毎晩家でカミさんと一緒に食べたりといった具合だ。

 

研究によれば、幸福度はここから80歳に向けて右肩上がりに続いていくという 。 そう聞いただけで、何だか未来に対するワクワク感が増してくる。

 

もちろん、年齢を重ねれば体力的な衰えや別の苦労も出てくるだろう。しかし、これからの人生が「楽しみながら歩む時間」であるならば、選んだ仕事にこれまで以上に向き合い、楽しんでいきたいと思う冬の朝であった。