仕事と感情を切り離せない部下への接し方
仕事と感情を切り離せずに悩んでいる部下を持つと、「どこまで踏み込んでいいのか」「どうすれば冷静に動いてくれるのか」と頭を抱えてしまう読者も多いと思う。
感情的になる部下を目の前にして、若さや経験不足が原因と決めつけてしまっては、それ以上事態はよくならない。背景に心理的な要因や仕事への向き合い方の癖が隠れているのではないだろうか。
部下が「感情」に支配されてしまう理由はおもに以下の3つといわれている。まずひとつ目は自己評価と成果の直結があげられる。仕事の失敗を「能力の不足」ではなく「自分自身の存在の否定」と捉えてしまうパターン。指摘を「攻撃」と感じて防御反応が出てしまう。
次にあげられるのは、完璧主義によるプレッシャーである。「正しくなければならない」という思いが強すぎると、ミスや予期せぬ変更にパニックを起こし、感情の制御が効かなくなる。
そして3つ目は心理的安全性の不足または過剰である。「怒られるのが怖い」という不安が強いか、逆に「上司ならこの感情を受け止めてくれるはず」という甘え(境界線の欠如)がある場合に起こりやすい。

では、そのような心の状態の部下に対しては、「共感」と「事実(ゴール)」を明確に分けるコミュニケーションを試してみてはいかがだろうか。以下4つのアプローチを考えてみたい。
部下が混乱している時は、まずその感情に名前をつけて言語化させてみる。 感情の「ラベリング」を助けるアプローチである。ストレートに「感情的になるな。落ち着け」と声をかけるのではなく、「今は『悔しい』と感じているのかな?それとも『どうしていいか分からない不安』かな?」と手を差し伸べてみる。感情は言葉にされると、脳の論理を司る部分が働き出し、少しずつ冷静さを取り戻せるようになる。
そしてフィードバックの際は、主語を「あなた」ではなく「仕事・成果物」に固定したい。「事柄」と「人格」を切り離して伝えるのだ。「君のやり方が悪い」ではなく、「この資料のこの数字を、〇〇の基準に合わせて修正しよう」と、修正すべき「対象物」を指し示すのだ。
また感情が表に出ている場合、「感情を消せ」と言うのではなく、「感情があっても、アウトプットを維持するのがプロの仕事」という考え方を伝えてみたい。「悲しくてもいいし、腹が立ってもいい。ただ、その状態のままでいいから、この仕事だけは完了させよう」と、感情の解決を待たずに着手させるためのスモールステップを提示する。
さらに上司が部下の感情をすべて「背負いすぎない」ことも重要だ。境界線(バウンダリー)を引くのだ。あまりに感情が昂ぶっている時は、「一旦10分休憩して、冷静に話せるようになったら再開しよう」と、物理的・時間的な距離を置くルールを作ってみたい。
部下が感情的なのは、それだけ仕事に対して「真剣(または繊細)」であるという証拠ともいえる。そのエネルギーをうまく「成果」に向けられるよう、少しずつ方向修正を働き掛けていきたいものである。