部下の「好き・嫌い」という感情をマネジメントに活かす
今週は、多くのマネージャーが蓋をしがちなテーマ、部下の「好き・嫌い」という感情について考えていく。「仕事を選り好みするな」という精神論が通用しなくなったいま、この感情をどうマネジメントに活かすべきだろうか 。
かつての「体育」的マネジメントでは、個人の感情は抑制すべき対象であった 。しかし、現代において「好き・嫌い」を無視することは、組織にとって大きなリスクとなる。その理由を整理してみた。
感情が行動の引き金である:人間はまず「感情」で動き、その後に「論理」で正当化する生き物なのだ。
- 「嫌い」は「認知の歪み」を生む:ネガティブな感情(嫌い、不安)を抱いていると、上司の正しい指示も「押し付け」や「攻撃」と認知され、パフォーマンスが低下してしまう。
- 「好き」は内発的動機の源泉:部下にとっての「楽しい(好き)」とは、自己成長や社会貢献の実感に直結しており、これが高い成果を生むドライバーになる。
部下の「好き・嫌い」を単なる選り好みと切り捨てず、その裏側にある「理由」にフォーカスすることが重要だ。感情のサインにフォーカスし、その裏側の理由を考えるとこんな感じだろうか。
- 「この仕事が好き・楽しい」:どの部分に「成長」や「貢献」を感じているか?
- 「この仕事は嫌い・苦手」:目的が不明確か? それとも心理的安全性が不足しているのか?
- 「やりたくない」という無言の訴え:キャパシティオーバーか、私生活での不安があるのか?

それを踏まえ、部下の感情を成果に繋げるために実践できるアプローチは以下のとおりといったところか。
- 「好き」と「得意」の掛け合わせを見極める: 部下が何に「楽しさ」を感じるのかを密なコミュニケーションで把握し、その領域で少し難しい課題(スモールステップ)を提示する。
- 「嫌い」の背景にある「不安」を取り除く: 「嫌い」という言葉の裏には、失敗への恐怖や心理的安全性の欠如が隠れていることが多い 。まずはその感情を「ラベリング(言語化)」させ、味方であることを示す。
- 「役割」ではなく「意味」をアサインする: 単に仕事を押し付けるのではなく、「なぜあなたに任せたいのか」「この仕事がどう役立つのか」という「意味」をていねいに説明し、納得感を引き出す 。
部下の「好き・嫌い」に向き合うのは、正直「面倒」だ 。しかし、部下を一人の人間としてリスペクトし、その感情を理解しようと努める姿勢こそが、信頼関係の土台となる。
「納得はしていないけれど、あなたの言うことならやります」と言ってもらえる関係性は、日頃から彼ら彼女らの感情に寄り添い、誠実な対話を積み重ねた先にしかないのである 。