課題図書
先日、あるクライアントと人材育成について意見を交わす機会があった。今年の注力施策として、管理職や次世代リーダーのさらに一歩手前、いわゆる「全体の中堅層」の底上げを図りたいという。
その一環として「70:20:10の法則」の10、つまり知識のインプットを強化したいという要望であった。そこで、数冊の「課題図書」を提案してほしいという依頼を受けたのである。
さて選定の切り口だが、会社員時代を振り返り、劇的な成長を遂げた数々の部下や同僚たちの姿を思い浮かべた。彼ら、彼女らの中で一体何が起きていたのかを考えてみると、そこには「仕事に対する向き合い方」であり「担当している仕事を、自分なりにどう意味づけているか」がポイントのように思えてきた。つまり「仕事を意味づけする力」である。
「仕事を意味づけする力」とは、与えられた仕事を、自分なりの価値、意義、目的を見出し、それを内発的な動機づけへと変換する能力を指す。これは誰かから与えられるものではなく、自ら工夫して「この仕事は誰の役に立つのか?」「ここから何を学べるか?」と再解釈するプロセスそのものだ。
この能力に長けている人は、一見すると地味な定型業務であっても、それを自己成長の機会やゲームのような楽しみに変えてしまう。結果として、高い成果を出し続け、モチベーションが尽きることがない。
学術的には、自ら仕事のやり方や捉え方を再定義する「ジョブ・クラフティング」や、抽象的な事象から本質を導き出す「コンセプチュアルスキル(概念化能力)」の一部としても位置づけられる。

現代のビジネス環境において、この「意味づけ力」が重要視される理由は主に3つあると言われる。
- モチベーションの自律維持:上司からの指示待ちや、報酬のためだけの労働は、いずれ限界が来る。仕事に自分なりの意味を見出せれば、外的な環境に左右されず、自発的にエネルギーを湧き出させることができる。
- 困難を乗り越えるレジリエンス:目標達成が困難な局面やトラブルに直面した際、「これは自分を鍛えるための試練だ」という意味づけができれば、折れることなく耐え抜き、完遂する力が生まれる。
- 組織エンゲージメントの強化:「自分の仕事が社会やチームにどう貢献しているか」を問い直すプロセスは、組織の一員としてのアイデンティティを強固にし、会社全体の目的と個人の活動を接続させる。
仕事の意味づけがなされると、ただの「作業」は「目的のある活動」へと昇華される。この変容こそが、個人の幸福度と組織の生産性を同時に高める唯一の解ではないだろうか。
最近はYouTube動画をダラダラと見ることが多く、読書から少し遠ざかっていた。しかし、今回の依頼を受けてから、Amazonで取り寄せた5冊ほどの候補本を、スキマ時間を惜しんで読み耽っている。
明日の打ち合わせまで、残された時間はわずかである。さて、明日の打ち合わせに果たして間に合うのだろうか