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気持ちのマネジメント(第27回)

部下が「指示待ち」になるのはマネージャーの責任である

「何度言っても部下が自分から動かない」「いつも指示を待っている」と悩むマネージャーは実に多い。人事や組織開発の仕事を通じて組織の様子を見つめていると、こうした部下の主体性やモチベーションの低さを嘆く声を頻繁に耳にするのである。しかし、ここで少し視点を変えてみることをお勧めしたい。部下が指示待ちになってしまうのは、本当に彼ら彼女らの能力や性格だけの問題なのだろうか。

 

実のところ、「指示待ち」という状態を作り出しているのは、他ならぬマネージャー自身の無意識の行動であるケースが少なくないのだ。例えば、部下が相談に来たとき、よかれと思って先回りし、すぐに「正解」を与えてしまってはいないだろうか。

 

あるいは、結果だけではなく、「こうやって進めなさい」とプロセスまで細かく指定してはいないか。さらに、部下が勇気を出して持ってきた提案に対して、リスクを避けるあまりアラ探しをし、すぐに否定してしまってはいないだろうか。

 

こうしたマネージャーの行動は、部下の心に静かな諦めをもたらす。先回りして答えを与えられれば、「自分で考えても結局は上司のやり方になるのだから、最初から聞いた方が早いしラクだ」と思うようになる。

 

プロセスまで細かく管理されれば、「信頼されていないのだな。言われた通りにやっておけば、失敗しても自分の責任にならないし」と、当事者意識を手放してしまうのである。

 

どうせ否定されるなら提案などしない方が身のためだ、と心を閉ざしてしまうこともあるだろう。

 

これらはすべて、マネージャーの「失敗させたくない」「効率よく進めたい」という親心と、部下の「任せてほしい」「認められたい」という気持ちのすれ違いから生じる悲劇なのだと思うのである。

 

 

では、部下が自ら考え、行動する「自走するチーム」を作るにはどうすればよいのだろうか。それは、マネージャーが「教えすぎる」ことをやめることから始まる。

 

まずは、「こうしなさい」という断定的な指示や、先回りして口を挟むのをぐっと堪えることである。仕事をお願いする時は、「何を」「どうやって」と細かく指定するのではなく、「なぜこの仕事が必要なのか」という目的とゴールだけを共有し、やり方は彼らの裁量に任せてみるのだ。

 

そして、答えを教えるティーチングから、問いかけるコーチングへとシフトするのである。例えば、新しいITツールやAIを業務に導入する際など、正解のない課題に取り組む場面でもこの姿勢は有効だ。

 

「どう活用すればいいと思う?」「どんな課題が出てきそうだろうか?」と問いかけ、部下自身の内側から答えを引き出す。もちろん、初めからうまくはいかないし、失敗することもあるだろう。しかし、「失敗してもカバーするから、まずはやってみよう」という安心感、すなわち心理的安全性が担保されていれば、部下は必ず自らの足で歩き始めるのである。

 

長年染み付いたマネジメントの癖を急に変えるのは難しいかもしれない。そこで店主が提案したい明日からの「はじめの一歩」は、実にシンプルである。部下に指示を出す前、あるいは相談を受けた時に、すぐに答えを出すのを堪え、「あなたはどう思う?」と一度だけ聞いてみることだ。この一言が、部下の「考えるスイッチ」を入れる、最も簡単で強力な方法なのである。

 

マネージャーの真の役割とは、決して正解を教え込むことではない。部下が自分なりの正解を見つけ出せるよう、伴走し手助けをすることなのだ。部下の「指示待ち」は、ともすればマネージャーの過剰な管理や干渉の裏返しである。

 

「あなたはどう思う?」という、相手へのリスペクトを込めた小さな問いかけから、すれ違っていた気持ちを結び直すコミュニケーションを始めてみてはいかがだろうか。店主もまた、この問いかけの持つ力を信じ、組織の自律をこれからも後押ししていきたいと思うのである。