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HD創業日誌

会社員時代の4月1日

昨日は社外取締役を務める会社の入社式に参加するため、電車に乗った。車窓から見える桜は見事に満開で、思わず息をのむ。そういえば、4月1日とはこんなにも桜が美しい日だったのか。そんな当たり前の事実に、今さらながら気づかされた。

 

全国で多くの企業が入社式を迎え、真新しいスーツに身を包んだ若者たちが希望を胸に社会へと旅立っていく。店主もまた、そんな彼ら彼女らの姿を目にしながら、会社員として働いていた頃の記憶をたどってみた。

 

不思議なことに、当時の記憶には、この季節の桜の風景がほとんど残っていない。それもそのはずだ。会社員時代の4月1日前後といえば、1年で最も多忙を極める時期であった。

 

人事という部署にとって、春はまさに嵐のような季節だった。その始まりを告げるのが、2月下旬に発表される大規模な人事異動だ。役員から課長クラスまで、100名を超える異動と組織変更。その発表に至るまでには、数ヶ月にわたる緻密な検討が重ねられている。

 

もちろん、発表して終わりではない。異動の発令は4月1日付け。そこからが本当のスタートだ。異動に伴う膨大な手続きが始まり、組織は一気に慌ただしくなる。

 

さらに、3月末は年度末でもある。事業年度の締めくくりであると同時に、人事評価期間の最終日でもある。全社員の人事評価を取りまとめ、集約する作業もこの時期にピークを迎える。

 

その一方で、4月1日から始まる新年度の準備も同時並行で進めなければならない。新しい組織体制のもと、各部署が新年度の事業計画や方針を策定するための準備も、すべて3月中に行われるのだ。

 

 

各部門では期初スタートと同時に事業計画や方針の説明を行う。そうしないと、新年度の計画や目標が立てられないのである。

 

そして迎える4月1日。この日は、人事部にとって最大のイベントの一つである入社式が開催される。式の準備から運営、そして式後の新入社員研修のスタートまで、まさに息つく暇もない。

 

それだけではない。3月末は決算の棚卸し日でもある。人件費関連のデータを扱う人事部には、決算資料の作成という重要な仕事もあった。

 

店主がいた自動車部品メーカーには労働組合があり、春闘もこの時期の大きな仕事だった。2月中旬から始まった交渉は、3月半ばの集中回答日に向けて佳境に入る。事務折衝や団体交渉を幾度となく繰り返し、ようやく妥結に至る。

 

しかし、それで終わりではない。妥結内容に基づき、翌年度の賞与の計算式や昇給の配分方法を決定し、新しい賃金テーブルを作成する。この案を労働組合と調整しながら、社内の承認を得て、最終的に確定させるのだ。

 

これらすべての業務が、4月1日を挟んだ期間に、まるで洪水のように押し寄せてくる。桜の花をゆっくりと愛でる余裕など、当時の店主にあるはずもなかった。そんなことを、電車に揺られながら思い出していた。

 

車窓から目黒川沿いの見事な桜並木を眺めていると、当時の喧騒がまるで昨日のことのように思い出される。忙殺される日々のなかで見過ごしていた美しい風景が、今になって少しだけ眩しく目に映る。こうして穏やかに桜を眺められる今に、ささやかな幸せを感じた4月1日だった。