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HD創業日誌

生成AIの威力

最近、クライアントからの案件で契約書締結作業の事務局をやっている。契約先ごとに文面を整え、相手へ送り、進捗を追う。専門性は深くないが、量と段取りの妙が問われる仕事である。

 

そこへ追加の依頼が来た。「契約書末尾の名簿に載っている対象者へ、別の通知書を一人ずつ配布したい」とのことであった。最初からわかっていたなら先に言ってくれ、と思うが、言っても始まらない。

 

問題はデータの所在だ。対象者名簿は契約書末尾の別紙にしかない。例外なくPDFの中である。契約先は約70社、名簿の合計は約200人。

 

これまでであればPDFを一枚ずつ開き、名簿をコピペして整形するというもの。しかしこれは骨が折れる。そこでAIにお願いしてみることにした。これまでこのような作業は試したことがない。


店主が仕事で使っているAIはGoogleのGeminiと、法人契約で付いてくるNotebookLMである。NotebookLMの有料版ならソースの読み込みが最大300件まで可能だ。今回の契約書は70件。Geminiでは一度に読み込めるファイルが10件なのでNG。

 

NotebookLMの特徴は、指定したファイルやURL、動画の音声などをソースにして回答を生成する点にある。学習済みデータから一般論を返すのではなく、限定した情報源に基づく出力をくれる。社内ルールの検索や運用にも向いているが、今回は対象の契約書から名簿項目を抽出させるのだ。

 

この作業に入力したプロンプトは以下のとおり。

---

提供されたソースは、契約書です。
各契約書から以下の項目を抜き出し、スプレッドシートに出力してください。
項目
-契約当事者乙(8ページ)の住所
-契約当事者乙(8ページ)の事業者名
-氏名(9ページ)
-期間(9ページ)

#条件
-氏名を1レコードとして、氏名に対応するほかの項目を同一レコードに表示してください

#表示形式
表形式とし、以下の順で左から列見出しを設定してください
-氏名(9ページ)
-契約当事者乙(8ページ)の住所
-契約当事者乙(8ページ)の事業者名
-期間(9ページ)

---

 

2〜3分で回答が返ってきた。スプレッドシートに吐き出してざっと確認する。ぱっと見は完璧そうだが、当然ながら全件チェックは必須である。正式なアウトプットにするなら、手作業でもAIでも検証工程は変わらない。

 

全件を確認した結果は驚きであった。70件の契約書から対象者名簿を正確に拾い、合計200人分の項目を一つの間違いもなく並べていた。抽出漏れなし、項目ズレなし、文字化けもない。

 

 

砂をかむような無味乾燥な作業が、一瞬で終わった。ここまで正確なら、次の通知書の宛名差し込みやテンプレート生成にすぐ移れる。

 

「どうせチェックは必要だろう」という声もあるだろう。それはその通りで、アウトプットの元データとして使うなら検証は必須だ。ただし、AIが最初の抽出を高速・正確に済ませれば、工数の重い部分がほぼ消える。人の力は例外や判断に振り向けられる。精神的な負担も軽い。気が重い作業が瞬時に片付き、仕事に前向きさを取り戻させてくれる。


今話題のAIエージェントは、この延長線上にあるのは間違いない。端末内のファイルを読み書きし、スプレッドシートを整え、メールや通知を所定のルールで送り、必要なログを残す。人がやるべきはルールの設計と監督、そして結果の最終判断。

 

AIは魔法ではない。ソースの指定、プロンプトの精度、検証の仕組みが要る。それでも、「付加価値を生まないが避けられない作業」を、数分で終わらせたという事実はすばらしい。

 

日々の進化をウオッチし、日々の仕事に組み込んでいかなければ!とあらためて感じさせてくれる出来事であった。