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気持ちのマネジメント(第39回)

質問の仕方を変えるだけで、部下は自ら考え始める

最近、AIへの指示出しである「プロンプト」の重要性が叫ばれているが、人間同士のコミュニケーションにおいても「問いかけ」の質が相手の出方を大きく左右する。

 

原因を追及する「なぜ」という問いは、部下の耳には「責められている」と変換されてしまう。その瞬間、彼ら彼女らの脳は自己防衛のスイッチが入り、思考がフリーズしてしまうのだ。部下が自発的に動けないのは能力のせいではなく、上司の問いかけによって脳が「恐怖モード」に陥っているからかもしれないのである。

 

しかし、問いかけの言葉を少し変えるだけで、部下の心には劇的な変化が起きる。そのコツは、「なぜ(Why)」を「何を(What)」や「どのように(How)」に変換することである。

 

たとえば、ミスが起きた際に過去の失敗を「なんで?」と責めるのではなく、「この状況を解決するために、今から何ができるかな?」と未来へ意識を向けさせるのだ。これにより、過去への後悔や恐怖心が消え、どうやって挽回するかという前向きな思考へと切り替わるのである。

 

 

また、部下の性格やマインドセットによって、心地よいと感じるアプローチは異なるということも忘れてはならない。

 

自己評価が低く「すみません」が口癖の自信なさげなタイプには、「あなたはどうしたい?」という自由度の高い問いはかえってパニックを引き起こしてしまう。代わりに「A案とB案なら、どっちが進めやすそう?」と二者択一で問うことで、彼らは自分の感覚に自信を持てるようになるのだ。

 

一方で、失敗を極度に恐れる慎重派には、「たたき台として、1つだけ懸念点を挙げるとしたら?」と極限まで思考のハードルを下げてやると安心するのである。

 

ITツールがどれほど進化し、効率的に答えを出せるようになっても、人間の感情は簡単な数式では解けない。どのようなタイプであれ、共通する鉄則は「相手の回答を絶対にすぐ否定しない」ことである。

 

まずは受け止めるというリスペクトの姿勢が、心理的安全性、すなわち「ここにいていい、間違えても大丈夫」という安心感を生み出すのだ。

 

問いかけを変えることは、部下の心にかかったブレーキを外す最も強力なアプローチである。自立のサイクルは、安心感という土壌からしか芽生えない。

 

質問の仕方ひとつで、メンバーは自分ごととしてその課題を考え始めるのである。いそがしいビジネスの現場であっても、つねに相手の気持ちを考えてコミュニケーションをとっていきたい。