マネジメント研修
マネジメントを課題ととらえている企業は、ほとんどと言ってもよく、相談をいただくことが多い。お話をうかがうと、すぐに研修の話になり、その話題に終始してしまう。
もちろん、研修そのものを否定するつもりは毛頭ない。だが、日々のコンサルティングの現場で少しばかり気になっていることがある。それは、あまりにも多くの人が「研修さえ実施すれば、マネジメント力は身につくものだ」と無意識のうちに信じてしまっていることである。あたかも、研修が人を一瞬で変える魔法の杖であるかのような認識が、世の中のデフォルトになっている気がしてならないのだ。
時折、クライアントが過去に実施したという研修のメニューや資料を見せていただく機会がある。きれいにデザインされたスライドには、最新のマネジメント理論が整然と並んでいる。
しかし、残念ながら「この理論やスキルを現場でどう実践につなげるか」という視点がすっぽりと抜け落ちているものも散見される。研修を提供する企業もそうだが、それを導入する企業や人事担当者の方々にも、ある一つの原理原則をぜひとも理解していただきたいと思うのである。
それは、「研修は単なるきっかけに過ぎず、そこから本当のトレーニングがスタートする」という事実だ。
人材育成の世界には「70:20:10の法則」という有名な経験則がある。ビジネスパーソンが成長する要素のうち、70%は現場での業務経験、20%は上司や周囲からのフィードバックや薫陶、そして残りの10%が研修や読書といった公式な学習から得られるというものだ。
つまり、研修という10%のインプットだけでは、人は成長しないのである。この法則をまずしっかりと理解し、それを育成の仕組みとして構築・運用すること。そして、その考え方を現場の社員や経営陣にも周知し、納得した上で日々の実践に落とし込んでもらうことが何より大切なのである。

結局のところ、人材育成はビジネスのリアルな現場でしかできない。座学で水泳の理論を完璧に理解したからといって、いきなりプールに飛び込んでクロールが泳げる人はいないだろう。
マネジメントもそれと全く同じである。理論を頭で理解するのは、単なるスタート地点に過ぎない。現場というプールに入り、日々の業務の中で小さなPDCAを回しながら、繰り返しトレーニングをして体に覚えさせる。まさにスポーツと一緒なのだ。
そして、その実践の過程で欠かせないのが「20%」にあたる、上司や周囲からの適切なフィードバックである。現場でのOJTを通じて試行錯誤し、周囲から客観的な意見をもらって軌道修正をしていく。この泥臭いサイクルを回し続けることでしか、本物のスキルは定着しない。
さらに言えば、知識やスキルの習得は、一度聞いて終わりというわけにはいかない。少しずつ角度を変えて、何度も繰り返し学ぶことで、ようやく自分なりの血肉となっていくものだ。
だからこそ、マネジメント研修は一度きりのイベントで終わらせるのではなく、毎年角度を変えて繰り返すことが定石なのだ。たった1回の研修で素晴らしい能力が身につくのであれば、世の中の経営者も、店主のような人事コンサルタントも、誰も苦労はしないのである。
「話題の研修をやりました」という事実だけで終わってしまっては、それは担当者や会社側の自己満足そのものであろう。
人の成長に特効薬はない。だからこそ、この「現場での実践とフィードバックこそが育成の本番である」という原理原則を組織のOSとしてインストールし、社員全員で地道に実践していく風土を作らなければならないのだ。
そんなことを考えさせられた一週間であった。