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気持ちのマネジメント(第45回)

部下から「リスペクト」されるマネージャーになるには

組織の中の人間関係で信頼関係を築くためには、まずはお互いに相手をリスペクトすることからはじまるということに異論がある読者は少ないと思う。

 

それでは、どのようにすればリスペクトされるのだろうか?「部下からリスペクトされたいと願うなら、まずは自分から部下をリスペクトする」ここからスタートだ。

 

これは単なる美しい精神論ではない。人間には、他者から受けた好意や態度をお返ししたいと感じる「返報性の原理」が働くからである。あなたが相手の意見や存在を重んじれば、相手も無意識のうちに同じようにあなたを重んじようとするのだ。

 

組織という場所では、誰もが少なからず心の防御線を張っているものである。特に上司と部下という権力勾配のある関係性においては、その傾向がさらに顕著になる。だからこそ、上に立つ者から先にリスペクトを示すことが重要になる。

 

それは「私はあなたの敵ではない」「あなたという人間を大切に思っている」というメッセージとなり、相手の警戒心を解き、心理的安全性をもたらすのである。逆に、威圧的な態度をとれば相手は心を閉ざすか、密かに反発するだけだ。目の前の相手の振る舞いは、自分自身の接し方を映し出す鏡であると心得ておきたい。

 

しかし、ここで一つ気をつけておかなければならないことがある。それは「自分自身へのリスペクト」を決して忘れてはならない、ということだ。

 

相手の気持ちを重んじることは大前提として素晴らしいことだが、相手を尊重するあまりに過剰にへりくだらせたり、理不尽な要求まで受け入れたりしてしまうのは、リスペクトではなく単なる「迎合」である。迎合は相手の顔色をうかがう行為であり、残念ながら、結果として相手から軽んじられる原因になってしまうことが多い。

 

真の相互リスペクトを築く鍵は、「あなたの意見も大切にするが、私の意見も同じように大切にする」というバランスにある。

 

心理学やコミュニケーションの領域ではこれをアサーティブな態度と呼ぶが、要するに、自他を共に尊重する毅然とした姿勢のことである。相手の言葉に真摯に耳を傾けつつも、マネージャーとして譲れない軸はしっかりと持つ。そのしなやかな強さこそが、結果として部下からの深いリスペクトを集めるのだと思うのである。

 

相手を尊重することと、自分を大切にすることは、決して対立するものではない。むしろ、自己をリスペクトできている人間だからこそ、余裕を持って他者を心からリスペクトできるのだと、今なら分かるのである。

 

マネジメントとは、単なる業務管理や便利なITツールの導入にとどまらず、こうした生身の感情の機微に向き合う、極めて人間臭い営みである。AIがどれほど進化し、業務が効率化されようとも、人と人が心を通わせ、互いに敬意を払い合うプロセスを代替することはできないのだ。