ミニカー
幼稚園の頃、店主がバスの絵を描くこととならんで熱中していた遊びは「ミニカー」であった。
母親と駅前に買い物に出かけ、1台だけ買ってもらえるミニカーが店主にとってなによりの楽しみだった。いつもミニカーを買うのは、駅前にあった地元の百貨店「エンドーチェーン」であった。
仙台駅前のエンドーチェーンは、建物自体が取り壊されたわけではなく、1997年から同じ場所で複合商業ビル「EBeanS(イービーンズ)」として営業を続けている。現在もエンドーチェーンが運営している。
当時、そのおもちゃ売り場の一等地に、トミカのショーケースが堂々とならんでいた。毎回なにを買うかガラスにへばりついて悩み抜くのだが、その迷う時間自体も至福の時だったことを覚えている。

こうして月に1台のペースで、店主のラインナップは着実に増えていった。和室の畳のヘリが「道路」である。そこへありったけのミニカーをならべ、実際の道路上に走っているクルマたちを再現し、動かしてはならべるという単純な作業を、毎日飽きもせず繰り返していた。
ただ、店主には幼児ながらに少々の不満があった。大好きなバスのミニカーも持っていたのだが、乗用車とならべると縮尺が合わないのだ。さらに、カラーリングが東京都営バスであり、地元・仙台を走っているバスではないことにも納得がいかなかった。
そんなトミカ好きの幼児にとって、最大の出来事が訪れる。誕生日に「トミカビル」を買ってもらったのだ。しかも、通常の3階建てではなく、なんとデラックス版の5階建てだった。

このビルは、モーター式のエレベーターが付いていて、クルマを載せて最上階まで引き上げ、そこから通路を下ってきて、任意の階の駐車スペースにクルマを停めることができるという画期的な仕組みだった。
さらに1階はガソリンスタンドになっており、洗車機や作業ピットまでついている。この圧倒的なリアルさ加減が、幼児のマニア心に激しく火をつけることになった。
このトミカビルのおかげで、店主のトミカワールドはとてつもなく拡大し、四輪車への興味を強烈に増やすきっかけとなった。幼児の単なる「動くもの好き」から、明確な意思を持った「クルマ好き」へと成長していったのであった。
つづく…