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HD創業日誌

公的資格

近頃、クライアントから社員の資格取得に関するご相談を受ける機会が重なった。

 

実は店主自身、これまで会社の仕事に公的資格が必要とされるような業種に身を置いたことがなかった。ゆえに、この人事コンサルタントという仕事に就くまでは、公的資格など興味もなく、縁遠い世界であった。しかし、世の中を見渡してみれば、企業の業種や業態によっては公的資格の有無が事業の成否そのものを大きく左右する会社も決して少なくない。

 

ビジネスモデルや事業戦略を実際の人事施策へと落とし込んでいく作業は、一筋縄ではいかない。それぞれの業界特有の課題感、公的資格制度の概要、それに伴うメリットやデメリットを深く研究し、必要性と優先度を正しく理解しなければならない。その上で、世間の人材確保の難易度や自社の立ち位置を踏まえ、攻めるべき戦略を慎重に組み立てていく必要がある。

 

ありがたいことに、近年のAI技術の登場によって情報のリサーチや整理にかかる生産性は劇的に上がった。だが、集めた情報を事業の文脈に合わせて具体的な戦略や施策へと昇華させる思考のプロセスは、やはり人間が責任を持って担わねばならないポイントなのだと思うのだ。

 

人事という領域に対して、未だに「各種の手続きや人事制度づくりの部署」という、昭和型の人事管理のイメージから抜け出せない企業や人事担当者は思いのほか多い。しかし本来、人事とは会社経営における機能のひとつであり、その目的は「事業計画を達成すること」に他ならない。

 

そう捉え直してみると、社員の資格取得をどのように実現し、人事の仕組みで強化していくかというテーマは、極めて戦略的な取り組みであり、事業結果に多大な影響をおよぼすことがよくわかる。

 

 

「公的資格が必要」と言っても、仕事との関係性はさまざまだ。現場の社員全員が資格を所持していなければ責任ある仕事ができないケースもあれば、一方で、事業所や拠点に有資格者が1名配置されていればよく、その他のスタッフは資格不要という形態もある。この二つはどちらも事業に必須の資格を扱っているが、人事制度や育成のアプローチはまったく異なってくる。

 

前者であれば、入社後にいかに早く資格を取得させるかが一人前になるための絶対条件となる。ここでは、資格取得と処遇(格付けや給与)の連動性を強固にし、「資格を取らなければ責任ある仕事を担当できない=給与がアップしない」という強いメッセージを社員に発信したい。

 

一方、後者の「事業所に1名いればよい」というケースでは、処遇を資格の有無だけで一律に決めてしまうと、大きな歪みが生じる。資格を持たない社員が現場の実務で目覚ましい成果を上げていたとしても、資格の有無だけで処遇に差がつけば、当然ながら現場に強い不満が溜まるからだ。

 

このような場合は、資格そのものに対しては手当などで報いつつ、本業の業務遂行能力や職務価値については同じ土俵でフラットに評価し、格付けを行うやり方が最もフィット感が高い。

 

資格の取得難易度、対象となる仕事との関連性、さらにはその企業の採用力など、複雑に絡み合う要素を解きほぐしながら、いかにして有資格者の配置を実現するか。これこそが、事業と直結する「人事戦略の肝」なのである。

 

こう捉えると人事という仕事の面白さがよく見えるようになる。そんな人事の方々のお手伝いをすることは、やっぱり楽しい仕事だと感じさせられた一週間であった。