Cafe HOUKOKU-DOH

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IVY Note No.95

ゼロハリバートン

1980年代の第二次アイビーブームの時代、イケてる職業であった「広告代理店」の営業マンの格好といえば、ネイビーブレザーにチャコールグレーのウールパンツ、BDシャツにレジメンタルタイというバリバリのアイビールックであった。

 

そして、その手にはゼロハリのシルバーに輝くアタッシュケース、肩にはポスターを入れるケースを背負っているのがとてもカッコウよく見え、あこがれたものであった。

 

当時、あのアタッシュケースはどこのカバンだ?とネットもない時代に必死でファッション誌を読み漁り、その伝説を知ってなおさら手に入れたくなった。

 

 

NASAアポロ計画による月面着陸に使用され、有史以来はじめて地球外惑星への旅をした。そして、月の石を持って帰るためのカバンとして使われた。それもふつうに販売されていた民生用のモノをほんのちょっと改造しただけだという。

 

この伝説を聞くだけで、購買意欲は倍増である。そんな重要なモノを運ぶミッションを託されたカバン。カバンとしての機能を究極まで高めた代物であることは間違いないのである。

 

1930年代の米国にひとりのエンジニアがいた。彼の名はアール・P・ハリバートン・シニア。仕事で使っていたカバンのすき間から入り込む砂やほこりによって、大切な書類が汚れることに不満をいだき、自らの要求にこたえるカバンをつくってしまおうと考えた。

 

彼は、どんな環境にも対応する密閉性、耐久性、強度を兼ね備えたカバンが必要と考え、航空機設計会社の協力を仰いだ。そしてアルミニウム2024合金のケースが完成する。

 

当初は自分用だったこのケースだが、周囲が黙っているわけもなく、1938年に本格生産することになったのだ。

 

ちなみにアタッシュケースとは、正しくはアタッシェが正解。アタッシェ(attache)はフランス語で大使館や公使館付きの武官のことを指し、彼らが持ち運ぶ書類を整理して収納するための手提げカバンがその名の由来なのである。

 

カバン自体の重さや中に入れられる書類などの量、そして外側にポケットなど一切ない機能性など、普段づかいには少々工夫が必要だが、このクールなルックスと伝説を思い出すと、持ち歩きたくなってしまうカバンなのである。