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人事屋修行記(第106話)

内部統制

2000年代に入って会社を取り巻く環境として大きく変わってきたことのひとつに、コーポレートガバナンス企業統治)への関心の高まりがありました。それまでわが国の会

社経営においては、ともすると企業は経営者や社員のものといった感覚があったのに対し、株式市場のグローバル化が加速し、あらためて会社は投資家のものであるという資本主義の原則に立ち返る動きが強まってきていました。

 

そんな中、上場企業に対し金融商品取引法において、有価証券報告書の信頼性を担保するめたに、企業内のオペレーションを自らチェックする仕組みを導入、運用し、有価証券報告書に記載することが義務付けられました。いわゆる内部統制というものです。

 

当時の会社においても、法改正への対応に向けプロジェクトが立ち上がり、関連部署にも声がかかりました。人事では、給与計算など損益計算書における人件費などの計算を担当する給与厚生課が参加することになりました。

 

なにぶんにも法改正によって新しい概念が導入され、それへの対応です。社内にも誰ひとり経験者はいません。おのずと、まずは法改正の背景や趣旨、法律の求めるところなどを自ら勉強することからはじめることになりました。

 

 

いま振り返ると、この頃から新しい概念などへの対応を求められることが急に増えてきて、このような仕事への取り組み方が増えていったような気がします。

 

具体的な作業自体は、プロジェクトが進捗管理をしっかりやってくれていたので、それにしたがえばいいのですが、問題はどこまで対応するか、でした。法律の目的や要件を厳密に完璧にクリアしようとすると、膨大なチェック項目を設定し、大変な工数になってしまいます。

 

なので目的を踏まえて、目的が達成されるために社会通念上妥当なレベルでの対応はどこまでか、といういわば正解のない判断が求められます。

 

企業運営において、法律との付き合いはつねにこの目線が重要となります。法律は結構幅があって、その円のど真ん中、いわば真っ白を追求するのは誰でもできます。ただ、それでは、非常に非効率になってしまいます。

 

効率的な企業運営を目指し、グレーな部分に踏み込んで行きつつも、イザというときには社会通念と照らし合わせて、または監督官庁と議論をして、クロとならないレベルでの運用を行っていく。ここがプロとしての腕の見せどころです。

 

そのような観点でできるだけ簡便で、かつ法律の要件を満たすような仕組みづくりを実践しながら、とても勉強させられた取り組みでした。このような経験はなかなかできる機会はないので、とてもいい経験となりました。

 

つづく…