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IVYおじさんの創業日誌

給料差し押さえ

先日クライアントさんから社員に対する給料差し押さえが届いたとうかがった。きけば住民税を滞納していて地方自治体から差し押さえの依頼が届いたという。

 

店主は会社員時代、多いときには年間5~10件ほどの社員に対する給料差し押さえを処理してきた。

 

差し押さえの理由はさまざまだが、消費者金融への返済滞納や養育費の未払いなどが多かった。債権者が裁判所に「債権執行の申し立て」を行って、債務者である社員の給料や預貯金を差し押さえて、債権を回収する仕組みである。

 

www.courts.go.jp

 

この処理でいちばん厄介なのが、「多重債務者」に対する差し押さえである。消費者金融などから借り入れをしてクビが回らなくなる場合、別の消費者金融から借り入れをして返済に充てていくケースが多く、多重債務におちいっていく。

 

複数の債権者が給料差し押さえをおこなって、差押命令が複数届いた場合、どの債権に差し押さえた給料などを割り当てるのかは、会社では判断できないので、差し押さえた給料を法務局に「供託」することになる。そして裁判所が債権額に応じた配当を実施していく。

 

供託をしないまでも、手続きはやっかいである。まず、差し押さえ金額の計算。生活をおびやかさないよう1回あたりの限度額が決められていて、原則税金や社会保険料を控除した金額4分の1となっている。

 

ただし、税金等を控除した月額給料の額が44万円を超える場合には、33万円を超える部分について、生活保障には足りるということで全額差し押さえができる。

 

毎月変動する給料額をベースに差し押さえ額を計算し、それを債権者へ振込み、そして充当した債権額を会社が管理して、債権額がなくなるまで毎月手続きを行っていかなければならない。

 

ちなみに同じ債権でも養育費の未払いなどの場合には、より厳しく1/4ではなく1/2まで差し押さえが可能だ。

 

ところで今回気になったのは、差押命令が届いたのが裁判所ではなく自治体からだということであった。果たして自治体にそんな権限があるのか?と疑問がわいた。

 

そこで届いた書類を見せてもらった。そうすると「債権差押通知書」という首長の印が押されている書面に「国税徴収法第47条第1項第1号の規定により債権を差し押さえます」と記されていた。

 

 

そうなのだ。税金を徴収すべき役所には、実効性を担保するために法律によって債権差押の権限が与えられているのである。おそるべしである!

 

店主が会社員時代にこのパターンに出会わなかったのは、基本的に住民税は特別徴収という給与天引きになっていたためで、会社を辞めた場合などに納付書で支払う普通徴収に切替わるのだが、この税金を滞納していた社員がたまたまいなかったということなのだ。

 

自治体へ納める税金といえば、固定資産税や自動車税が身近であるが、あの納付書を見るとなんとなく遅れてもいいか、となりがちである。先ほどの通知書には「督促状を発した日から10日を経過した日までに滞納金が完納されないため」とあった。くれぐれも税金の納付はお忘れなく。