Cafe HOUKOKU-DOH

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IVY Note No.65

腕時計

「なぜ時計も着替えないの」。店主と同世代の方々であれば、耳にしたことのあるフレーズである。SEIKOが1986年に打ち出したCMのキャッチコピーだ。

 


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当時、このフレーズを聞いてたしかにと妙に納得させられた記憶がある。洋服や靴はアイテムをいくつも持っていて、毎日とっかえひっかえしてコーデを楽しんでいるのに、腕時計をTPOにあわせて付け替えるという発想は持っていなかった。

 

そもそも当時の腕時計はまだまだ高級品であった。1970年代半ばに液晶事業に強みを持っていたカシオは、液晶のデジタル腕時計を新規事業に定め進出した。

 

それまでの機械式時計にくらべ、圧倒的なコストダウンを可能にし、店主ら世代の小学生に、デジタル腕時計ブームを巻き起こしたのだ。

 

廉価版ではなく標準品のラインアップで1万円前後であり、小学生男子のメカ好き心をくすぐるには、十分すぎる品物であった。

 

しかし、ブームが過ぎるとやはりデジタル腕時計はサラリーマンオジサンのダサい時計といった位置づけになり、それなりに服装を気にする向きは、海外製の機械式アナログ時計を好んだ。

 

1990年代前半あたりで人気があったのは、TAGホイヤー。F1マクラーレンのスポンサードをしており、当時のF1人気ともあいまって、とても知名度があった。

 

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また、海外製のアナログ時計の割には、ほかのブランドと比較してもリーズナブルで、そのあたりも人気があった要因のひとつだったのだろう。

 

ちょっと渋めでいくのであれば、オメガスピードマスターも人気が高かった。アポロ宇宙船の飛行士の腕にはめられ、月まで行ったというエピソードは、メカ好き男子の購買意欲と所有欲を満たすのには十分なモノであった。

 

そんな万単位の価格のする腕時計である。複数本持っていて着替えるなどという発想など、出てくるはずもなかった。ちょうど、クルマを複数台所有して、TPOにあわせて乗り換えろというようなものである。

 

店主は会社員2年目に念願のロレックスを手に入れることができた。シンプルな「エアキング」というモデルであるが、「念願」というだけあり、以降、会社員を卒業する間近まで25年以上、ロレックス1本で過ごしてきた。

 

 

しかし、職場での服装がカジュアルになるにつれ、さすがに毎日エアキングというのも能がないと考え、カジュアル用にタイメックスクロノグラフを購入した。50過ぎてようやく時計を着替えることができたのだ。

 

タイメックスベトナム戦争時に軍用時計として採用されていたという機能性の高さが気に入って買った。ベルトがナイロン製のNATOストラップが使えることも理由のひとつである。

 

NATOストラップを取り換えるだけで、時計を着替えるのと同じ効果が得られるのだ。とくにアイビーご用達のリボンベルトと同じ配色のストラップをそろえて、交換して楽しむのはなによりである。

 

最近は、腕時計をつけない人も多いという。半袖になるこの季節。腕に時計をつけるだけでワンポイントになるので、ぜひ洋服と一緒にコーデを楽しんでみてはいかがであろうか。