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IVYおじさんの創業日誌

消費者物価指数

ここ半年、報酬制度を含めた人事制度見直しの仕事を担当させてもらっている。先月から報酬制度について、毎週クライアント企業の役員陣と議論を重ねてきた。スケジュールにしたがって、毎週たたき台の資料を準備して、意見をいただいて案を練る作業が続く。

 

報酬制度は、会社から社員に対してダイレクトに届くメッセージである。と同時に社員一人ひとりの生活にも関わるので、とてもシビアな面も持っており、さまざまな角度から検討が必要となる。

 

一般的に賃金制度や水準の決定要素は、社内の要因となる支払い能力と労使間の交渉、それと社外要因とされる労働力の需要と供給から決定される賃金相場ならびに生活を維持するための生計費と呼ばれる数値の4つから構成される。

 

生計費を算出する際に利用するのは、人事院都道府県の人事委員会が発表する「標準生計費」を参考にする。国家公務員などの給与勧告を行うための参考資料として調査している数値だ。

 

 

一緒に生活する家族が生活のために支出する費用として、世帯人数ごとに金額が計算されている。報酬制度の検討に使う際には、新卒で入社してから定年退職するまでの期間、結婚や出産、子供の就職などのイベントを織り込んだモデルをつくり、世帯人数を変化させ、報酬水準と比較する。

 

この資料自体は毎年、専門誌が編纂して販売してくれるので、簡単に手に入れることができる。企業で賃金制度の検討や労使交渉を担当している読者であれば、おなじみの書籍である。

 

専門誌に載っている標準生計費は、毎年決まった月の数値である。ここ20年くらい日本の物価は安定していて、標準生計費の基準年月などほとんど気にする必要はなかったのだが、昨今の値上げラッシュではそうもいかなくなってきた。

 

手元の数値は、昨年4月現在の数値である。なので、この数値に直近のCPI(消費者物価指数)の変化を織り込んで、現在の数値に補正する必要がある。

 

昨年4月の「全国10大費目消費者物価指数の推移」における指数は101.5、今年6月は105.2である。その差なんと3.64%の物価上昇だ。食料だけを見てみると約9%アップしている。

 

www.stat.go.jp

 

国をあげて物価上昇と賃上げを循環させ、経済を活性化していく方向に舵を切りはじめている。これからはわれわれが経験したことのないCPI上昇を前提とした報酬制度を検討しておかなければならない。

 

中小企業では人事の専門家を置く余裕がある会社は少数派である。なので、これからの報酬制度の設計に際しては、CPIや賃金相場の変化にあわせてベースアップを簡単に検討し、経営者が判断できる仕組みを組み込む必要がある。

 

今回の案件でもベア検討の仕組み化を提案することを考えていたが、CPIの変化を見て、あらためて必要性を強く感じたのであった。